「年金改革法案」成立に思うこと(1)

2020年9月19日

去る5月29日、「年金改革法案」が参院本会議で成立しました。
年金不安が増している中での改革法案の成立だったのですが、それにしても、このニュース、マスコミでそれほど大きくは取り上げなかったように思うのですが、ちょっと首をかしげてしまいます。

実は、この改革法案、大変重要な問題が含まれているんですよね。

そこで、注意喚起の意味もこめて簡単にふれてみたいと思います。

今回、成立した改革法案は厚生年金の加入対象となるパートなどの短時間労働者の範囲拡大や、年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げ可能にすることなど、受給者にとって大変重要な問題が含まれているんですよね。

受給者にとって最も関心な点の一つは、年金の受け取り始める年齢の選択肢が60歳から75歳まで広がるということだと思います。
要するに、年金の支給開始年齢は原則として65歳ですが、60歳からの繰り上げ受給と繰り下げ受給は70歳とされていたのが、改正により繰り下げ受給が75歳まで拡大されたのです。
それで、もしも75歳で受給を始めると65歳からの受給開始より、月額で最大84%の年金増になるとのことです。

ただ、問題は生涯の年金受給総額で考えれば、必ずしも増額になるとは限らないのですよね。
75歳から年金を受給開始した場合、受給総額が70歳から開始した場合の受給総額を上回るのは、およそ91歳以上まで生存した場合なんです。
また、年金が増額されることで所得税や社会保険料の負担が増えて、手取りにすると結果として必ずしも84%増にはならないことが十分にありえるのです。
しかも、医療や介護の自己負担額が上がる可能性も念頭に考えると、逆に実際の受給額は下がることさえありえるのです。
ある推算によると、75歳からの受給を選んだ場合、生涯の年金受給額は、約350万円も減るらしいですよ。
とんでもないからくりとしか言いようがないですね。

なので、文面通りに受け止めると、大きな損失を被ることになりかねないのです。
くれぐれも慎重に判断すべきではないでしょうか。

そもそも、91歳まで生存できるかどうかも微妙ですよね。

まあ、現在でも繰り下げ受給を選択している人は1%強にとどまっているそうなので、実際に75歳まで繰り下げて受給しようとする人は、そう多くはいないと思いますけどね。
いずれにしても、今回の「年金改革法案」をけっして見逃してはいけないと思いますね。

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Posted by apurokun