報道されているように6月から定額減税が始まります。関心が高まりつつも、まだよく知られていないことや、仕組みが複雑でよくわからないという人も少なくないようです。減税にょり手取り額がどう変わるのか、実際に減税されてみないとわからないという声もあるようです。
また、6月からも値上げがまだ続くなかで、今回の定額減税がはたしてどのくらい経済効果があるのか疑問視する職者も少なくないようです。
そこで、今回はこの定額減税にスポットをあてて、具体的な仕組みとその効果について要点をまとめてみます。
・定額減税のあらまし
定額減税とは、納税額から一定額を差し引いて減税する手法ですが、今回は一人当たり所得税3万円、住民税1万円の計4万円が減税されることになっています。さらにそこに扶養家族がいる場合は一人につき計4万円が加算されて減税されることになっています。例えば、夫婦と子供2人の4人世帯の場合は計16万円の減税となります。
減税対象は合計所得が1805万円(年収2000万円)以下で、それ以上の高所得世帯は対象外となっています。また、定額減税は納税額を減免する制度であるため、所得が基準以下で納税していない「住民税非課税世帯」などの低所得者世帯も対象外になっています。ちなみに、住民税非課税世帯には昨年末から7万円の給付金が支給されており、低所得者世帯には18歳以下の子ども1人当たり5万円が給付されているのです。
・減税される仕組み
それでは、どのようにして減税されるのでしょうか、その具体的な仕組みについてふれてみます。
まず、給与所得者の場合ですが、6月以降に受け取る給与や賞与で源泉徴収される所得税から控除されます。控除できない場合は翌月以降、2024年中に支払われる給与や賞与から控除されることになっています。個人住民税は6月分は徴収されず、1万円を引いた残りの金額を7月から来年5月までの11ヶ月で割った金額が徴収されることになります。
次に、事業所得者の場合は、2024年の所得税確定申告の際に所得税から控除されます。予定納税の対象者は確定申告の控除を待たずに6月以後に通知される「予定納税額」から納税者本人分にかかる金額が控除されることになるようです。個人住民税は、定額減税前の税額をもとに算出された第1期分(6月分)の税額から控除されます。
次に、公的年金受給者の場合ですが、6月以降に受け取る公的年金から源泉徴収される金額が控除されます。控除しきれない金額は、以後本年中に支払われる公的年金から源泉徴収される所得税から控除されることになります。個人住民税は定額減税前の金額が今年の10月分から特別控除されます。そこで控除しきれない場合は、12月以降の特別徴収税額から控除されることになります。
今回の定額減税は「調整給付金」が組み合わされているのですが、これは所得税や住民税の税額よりも定額減税が上回って引ききれない場合に、減税しきれない金額が給付金として支給される制度です。
所得税で引ききれなかった減税分と住民税で引ききれなかった減税分をまとめて市区町村が計算し、「調整給付金」として支給されるのです。対象者には今月頃から通知が届く予定だとされています。
・定額減税の経済効果について
政府は物価高で苦しむ家計を支援し、物価と賃上げの好循環の持続を目指し今回の定額減税のため、総額で約5兆円規模の財政措置をとったのですが、はたしてその経済効果が得られるのでしょうか。
新型コロナ禍で1人10万円が一律支給された特別定額給付金も、実際に消費に回ったのは3割程度だったことを踏まえ、今回の減税でも消費に回るのは約3割で、残りの約7割は貯蓄に回ると見る専門家は少なくないようです。
注目せざるを得ないのは定額減税が施行されるなかで、他方では物価の上昇は留まる気配がなく、6月にもまた値上がりする食品は後を絶たないでいます。それに加えて、大手電力10社と都市ガス大手4社は6月請求分から値上げすることを決めています。
また、森林整備などを目的とする新たな税金である「森林環境税」の徴収も6月から始まります。
総務省の家計調査によると、国民や企業が所得の中から税金や社会保険料をどれだけ払っているかを示す「国民負担率」は2013年度に40.1%であったのが、22年度は過去最高の48.4%まで上昇しており、24年度も45%を上回る高水準が続くと見込まれています。
このような状況を踏まえて考えると、減税により実質的な手取り額が増えると言われているわりには、国民の実感として可処分所得の増加には至らず、消費喚起効果は限定的だと言わざるを得ないでしょう。
ちなみに、1997年の消費税率5%への引き上げで個人消費が冷え込み金融危機にまで陥った時、当時の橋本政権は2回にかけて4兆円規模の定額減税を実施したのですが、個人消費の回復にはつながらなかったのです。
今回の定額減税は減税と給付といった、いわば「ハイブリッド型」の制度は事務手続きが複雑で対応におけるトラブルも懸念されるところです。
政府は定額減税の恩恵を十分に受けられずに不公平が生じることを避けるため、減税に給付を組み合わせる調整給付で対応することにしたのですが、負担が重くのしかかるのは自治体です。
また、各企業においては給与明細に減税額の記載を義務付けられているので、経理担当をはじめ事務手続きが複雑になるのは避けられないでしょう。すでにこの面でも不評が相次いでするようです。
いずれにせよ、今回の定額減税は複雑な仕組みになっており、国民にとって分かりづらい制度で、すでに現金給付で良かったのではという声もあがっているようです。
政府は「物価高を上回って可処分所得が増えるという状況を確実につくり、国民の実感を積み重ねていく」と強調しているのですが、この複雑でわかりづらい制度そのものが、国民の実感として「減税の恩恵」を希薄化させており、結果として消費への意欲を削ぐことになるのではと憂慮の念を抱いてしまうのですが、今後の動向に注目したいですね。
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