すでに資本によって、どのように剰余価値(利潤)が生産されるのか、またそれが表面的には利潤として現れる過程について確認しました。(第14回、第15回参照)
今回はこの剰余価値、利潤が資本の競争によって均等化される仕組みについて取り上げてみたいと思います。
剰余価値の利潤への転化
資本が目的とする利潤は、その内実は剰余価値であることはすでに確認したのですが、それを逆に捉えると剰余価値はあくまでも労働力の生産的労働をとおして生産されるのですが、資本にとっては商品を生産するために労働力だけでなく、生産手段も買い入れなければなりません。
言い換えれば、資本は労働力(労働者)と生産手段に支出されるのです。したがって、資本にとっての商品生産費用はこの労働力への支出と生産手段への支出とで構成されます。
今、労働力への資本の支出部分を可変資本(V)といい、生産手段への資本の支出部分を不変資本(C)とすれば、総資本支出は可変資本と不変資本の合計(C+V)になります。そして、この合計を費用価格といいます。
資本の立場からすれば、剰余価値はこの費用価格を超える商品の価値の超過分としてとらえますので、資本は儲け分を測る場合、この超過分を支出した全資本との比較でとらえるのです。
このように、支出された全資本に対してとらえた剰余価値が利潤なのです。
先にみたように、利潤は剰余価値の現象形態ですが、これは剰余価値が利潤というかたちをとると、剰余価値があたかも支出された全資本(費用価格)が生み出した果実であるかのようにあらわれることを意味します。
まさに外見と現実は違うということをこの点でも確認しておくことが重要ではないでしょうか。
利潤率とそのおおいさの決定要因
全資本に対する比較としてとらえた剰余価値を利潤といいましたが、このことから支出された全資本(費用価格)に対する剰余価値(利潤)の比率を利潤率といいます。利潤率については、すでに第15回の教室で剰余価値率との関係としてみたので確認しておいてください。
ところで、資本からすると直接には利潤率にもっとも関心をよせるのであって、つねに利潤率を高めようとつとめるのです。
それでは、利潤率の大きさは何によって決まるのでしょうか。
第一に、剰余価値率の大きさによって決まります。ほかの条件が同じであれば剰余価値率が大きくなるほど利潤率は大きくなります。
第二に、資本の有機的構成の高さによって決まります。資本有機的構成についてはすでにみたように、不変資本と可変資本の比率をあらわすのですが、有機的構成が低い(全資本における可変資本の比率が高い)ほど利潤率は高いのです。というのは、同じ大きさの資本でも、不変資本が小さく可変資本が大きいほど、より多くの剰余価値をう生産するからです。
第三に、資本の回転速度によっても左右されます。1年間に生産された剰余価値(利潤)の支出した全体資本(費用価格)に対する比率をあらわしたものを年間利潤率というのですが、剰余価値率と資本の有機構成が同じならば、この年間利潤率は資本の回転速度が速いほど高くなります。
このようなわけで、利潤を目的とする資本は利潤率をいかに高めるかが大きな関心事になり、これらの要因と関連して熾烈な競争のなかで、絶えず務めるようになるのです。
では一体、より多くの利潤を追求する資本の競争は利潤率にどのような影響を与えるのぢょうか。
平均利潤の生成と生産価格
周知のように資本主義の現代社会にはさまざまな生産部門があり、それらの部門では技術水準もちがっていて、その結果資本の有機的構成もちがいますよね。ある生産部門では可変資本の比率が比較的大きく、逆にある生産部門では不変資本の比率が大きいといった、それぞれ生産部門の特性から必然的に違いが生じてくるのです。
それゆえ、剰余価値率が社会的に一定の大きさとすると、資本有機的構成の低い部門ほど大きな剰余価値が生産され、したがって、その利潤と利潤率は大きいことになります。
しかし、資本にとってはできるだけ高い利潤率をもとめてたがいに競争しているのですから、利潤率の低い部門から資本を引きあげて利潤率の高い部門に資本をふりむけるでしょう。こうして、資本の有機的構成の高い部門から低い部門に向かって資本の移動が絶えずおこるのです。その結果、資本有機的構成の低い部門では資本がながれこむにつれて、以前より多くの商品が生産されて供給が増えるので、その部門の商品の価格は下がり、当然利潤率も下がります。
逆に、資本の有機的構成の高い部門では、資本がひきあげられるにつれて、供給が減るのでその部門の商品の価格は上がり、利潤率も上昇するのです。
このような結果を伴う資本の移動は、それぞれの生産部門の利潤率が等しくなるまでくりかえされるのです。それゆえ、さまざまな生産部門の資本同士の競争をとおして、すべての生産部門の利潤率は平均化され、こうして平均利潤率が形成されるのです。このことを平均利潤率の法則といいます。
そして、この法則にもとづいて、資本はさまざまな生産部門に支出された同じ大きさの資本に対する等しい利潤を獲得することになるのです。この同一資本に対する同一利潤を平均利潤といいます。
平均利潤率が形成されると、それぞれの生産部門の商品は、もはやその価値どおりではなく、費用価格に平均利潤を加えた価格で売られるようになります。これを商品の生産価格といいます。
こうして、資本の競争とその結果として貫徹する平均利潤率の法則によって、商品の価値は生産価格へと転化するのです。
このようにして商品は、この生産価格にもとづいて市場での需要と供給により現実の市場価格が決まり、私たちの前にあらわれるのです。
このことは、けっして価値法則と矛盾するのではなく、競争原理における価値法則の現象形態といえるでしょう。
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