アプロ君のいちからわかる経済教室;貸付資本とは何か

経済

資本の形態には、モノの生産に投資される産業資本や、直接には生産には関わらなく産業資本が生産した商品の販売に従事する商業資本についてはすでにみたのですが、これらとは異なった運動形態をもつ資本として貸付資本という形態があります。私たちの経済活動や生活において欠かせない銀行などがその主体として機能している資本の形態です。
そこで、今回はこの貸付資本の運動についてまとめてみます。

1)貸付資本とは何か

資本主義生産の発展過程で商業資本が独自の運動を展開してきたように、資本の回転過程で産業資本家の手元には、生産にすぐ投資されずに一時遊んでいる遊休貨幣資本が現れます。たとえば、機械や設備などのいわば固定資本の原価焼却金の積み立てや、必要に応じて購入する原料や燃料の購入費、また従業員に支払う賃金などが一定期間遊休状態におかれるのです。

他方では、その反対に自社商品がまだ売れてないのに原料を買い入れたり、従業員に給料を支払わなければならないなど、一定の貨幣資金を必要となる企業があらわれるのです。
こうして、遊休状態にある貨幣資金を資本家のあいだで貸し借りをすることが往々にして生まれるのです。

このように、貨幣資本の所有者が一定の報酬をとって、貨幣資本を要求する他の資本家に一定の期間つかわせる資本を貸付資本といいます。
資本主義生産の発展にともない、銀行家のように専門的に貨幣資本の取引をおこなう貸付資本家が独立した存在になり、こうして産業資本家や商業資本家などの他の資本家はいつも自分の手元に多額の予備金をねかしておく必要がなくなり、借入金によって自由に活動することが可能となるのです。

貸付資本が独自な存在になると、それをを所有している資本家とそれを現実に機能させる資本家が別に存在することになります。貸付資本に対して、それを現実に機能させる産業資本家や商業資本家を機能資本(家)といいます。

機能資本家は、貨幣資本をある一定の期間使わせてもらう代償として、貨幣資本を運用させて得た利潤の一部を貸付資本家に支払うのです。それが利子です。
このようして貸付資本は利子を生む資本ということから、利子うみ資本ともいわれます。
利子は機能資本の運動により得た利潤の一部であるので、利子の源泉は商業利潤のように生産過程でつくられた剰余価値であることはいうまでもないでしょう。

2)利子率 

先にみたように、貸付資本はその代価として利子を受け取るのですが、貸付られた貨幣資本に対する利子の大きさの比率を利子率といいます。
利子は機能資本の利潤(平均利潤)のなかから支払われるので、利子率の上限は平均利潤率であり、この限界内で実際には貸付資本の需要と供給の関係によって決まります。貸し手にくらべて借り手のほうが多い場合には利子率は高くなり、逆の場合は低くなります。

おおむね好況期には利子率は高く、不況期には低くなるのが一般的です。これは好況期と不況期とでは貨幣資本に対する需要と供給の関係が作用しているからにほかなりません。
好況期には貨幣資金の需要が高まり利子率が上がり、逆に不況期には積極的にお金を借りようと金利は下がるのです。勿論、利子率がゼロになれば、誰もお金を貸そうとはしないので、利子率はゼロを下限とし、平均利潤率を上限としてその範囲内で決まることになるのです。

3)信用と銀行

ところで、貸付資本の運動は信用を通して行われます。
信用とは他人に貨幣を一定の期間貸すことを意味します。信用には一般的に商業信用と銀行信用という二つの形態があります。

商業信用とは、商品の取引にあたって機能資本家(産業資本家や商業資本家)どうしが与え合う信用のことで、取引した商品の代金の支払いを一定期間先にのばすことです。掛け売りや掛け買いのことで、買い手は売り手に指定の期日に一定額の貨幣を支払うことを約束した債務証書(手形)を発行します。

銀行信用とは貨幣資本家(銀行家)が機能資本家に与える信用のことで、貨幣資本を貸付資本に転化させることを意味します。

今日、このような信用制度においてその拠点として機能しているのが銀行です。
銀行信用はもとより、商業信用においても銀行を仲介しておこなわれているのが一般的です。
銀行は貨幣資本そのものを商品として取引きし、債権者と債務者とのあいだのなかだちをする企業なのです。
企業どうしの掛け売り掛け買いに使われる手形の割引など、銀行は商業信用の仲立ちをしているだけでなく、遊休貨幣資本を預金として低い利子を払って受け取り、他方ではその資金を機能資本家により高い利子をとって貸付るなどして利潤を獲得しているのです。
このような銀行の役割によって商業信用と銀行信用がからみあってなりたっていると言えます。

現代社会において、銀行の役割なくして経済活動が成り立たないことは、私達の日常生活において日々実感していることは言うまでもないでしょう。

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