アプロ君のいちからわかる経済教室;おカネとその役割

経済

前回、私たちの生活は商品経済でなりたっており、商品交換は一定の価格にもとづいて行われていることについてアプローチしました。
このように、一定の価格に従って商品は交換されているのですが、現代社会ではすべておカネを媒介物としておこなわれているのは言うまでもないでしょう。
そこで、今回は商品交換の仲介者としてのおカネについてみていきます。
経済学ではおカネを貨幣と呼んでいます。
では、その貨幣とは何か、どのようにして生まれ出てきたのか、そしてその貨幣は私たちの生活においてどのような働きを果たしているのかについてお話したいと思います。

私たちの生活においておカネは欠かすことの出来ないものです。それは商品経済において必要とする物品やサービスは全ておカネで購入することが出来るからです。
おカネさえあれば何でも自分のモノに出来るのです。
人間の運命さえも変えることの出来る神秘的な存在と言っても過言ではないでしょう。

当たり前の話ではありますが、よくよく考えてみると、ではどうしておカネはそのような神秘的な力をもっているのかあらためて考えてみると、そう簡単に答えは出てこないものです。
そこで、まずおカネとは何か、いかにして生まれ出てきたのかを簡単にまとめてみたいと思います。

・貨幣とは何か

私たちの生活は交換を通してなりたっていると言いましたが、交換社会の当初は交換行為が物物交換でおこなわれていたのです。例えば、靴とコメがある一定量に基づいて交換されるというようなかたちで、ある意味では偶然な交換であったのです。

交換行為が広がるにつれ、多くの人が日常生活に必要な物を頻繁に交換するようになり、それがある段階では人々が生活するうえで必要とするある物とまず交換したあとで、その物を交換手段として他の必要な物と交換するようになったのです。
そうなると、その物はすでにおカネのような役割を果たしていると言えます。物品貨幣たるゆえんです。
この物品貨幣は地域ごとに違いがあって、ある地域では塩だとかコメを交換手段として利用したところもあったようです。
昔はよく貝を交換手段として利用していたとも伝えられています。
余談ですが、この貝にまつわる漢字で富をあらわす漢字が多々あるのはこのような由来があるからです。例えば財産、貯蓄、購買などの漢字はすべて貝という一文字がついているのがわかりますよね。

このような物品貨幣が最後には金(きん)にたどりついたのです。
金というのはおカネとしての役割を果たすうえでもっとも適していたからです。金は質的に均一であり、変質しないので半永久的に保管可能なのです。また、少量で大きな価値をもっているので運びやすく、高価な物の値段を表すことも容易に可能だったのです。このような金の性質こそおカネとして機能するうえで最適だったのです。
金という字はカネと読みますが、おカネという由来は金がおカネの役割を果たしていたからなのです。

こうして金がおカネとして、あらゆる物の値段(価格)を表すことや交換手段として利用するようになってはじめて貨幣としてこの世に生まれ出たのです。
このようにおカネ、すなわち貨幣はあらゆる商品の価格を表し、商品の交換を仲介する一般的等価物としての特殊な商品と言えます。

要するに貨幣も商品ということです。一般的等価物としての特殊な商品なのです。
そういう意味では人間の社会的な行為によって神秘的な力が与えられ、あらゆる物と交換できる力をもった存在としておカネ(貨幣)がこの世に生まれたといえるでしょう。

それではそのおカネ、すなわち貨幣は私たちの生活のうえで具体的にどのような働きをしているのでしょうか?

・貨幣の役割①

前述したように、おカネ、すなわち貨幣はあらゆる商品の価格を表し、商品交換を仲介する特殊な商品だということを確認しましたがもう少し立ち入っておカネの役割についてみていきましょう。

私たちの生活においておカネ(貨幣)の役割が絶大であることは、日々生活のなかで実感していることですが、一国内において貨幣の役割(機能)は大きく4つに分けることができるでしょう。

第一に、あらゆる商品の価値を測定する役割です。これを価値尺度の機能と言います。
商品経済において商品の交換が公正におこなわれるには、まず商品の価値が測定されなければなりません。商品の価値が正しく測定されてこそ商品の交換がスムーズにおこなわれるのです。その役割を果たすのが貨幣なのです。そういう意味では、この価値尺度の機能は商品交換のための第一次的でもっとも基本的な機能と言えます。

商品の価値を貨幣で表したものが価格なのです。それぞれ商品は価格表示がおカネの一定額でなされており、その価格表示(値段)に基づいて売買が成立するのです。

ところで、このことと関連して少し立ち入って探ってみようと思います。
商品の価値を貨幣で表したものが価格と言いましたが、実はこの価値と価格は必ずしも一致しているのではないのです。というのは、以前にもお話したように商品交換においては、ある商品に対する需要(買い手)と供給(売り手)によって実際の価格(市場価格)が決まるからなのです。供給に対して需要が大きければ価格は上がり、逆に需要が少なければ価格は下がることになります。
こうして、価値を基準にしながらも実際の市場価格は需要と供給によって常に変動しているのです。
そういうわけで価値と価格は一致することよりも、かえって一致しないことが日常的だと言えます。これを価値からの価格の乖離と言います。

貨幣の価値尺度の機能と関連して、もう一つ確認しておきたいのですが、商品の価値を貨幣で表すと言いましたが、この時おカネの分量をどのように表現し、度量するかという技術的な問題があるのです。

そもそも、おカネ、つまり貨幣は金(きん)でなりたっていることはすでにお話しましたが、この金の分量をどのように分けて商品の価値をあらわすかという問題が生じるのです。
そこで、各国ごと金の一定量を貨幣単位で規定して、その貨幣単位で価格を表したのです。
例えば、日本では円、米国ではドル、中国では元という貨幣単位で金の重量を表して、その貨幣単位で価格を表示しているのです。米国ではある商品の価格を何ドル、日本では何円というようにですね。
このように価格を表すために使われる貨幣単位を価格標準と言います。

もともとは、金で商品の価格を表していたのが、今はすべての国がこのように一定の貨幣単位(通貨単位)で表し、その通貨(おカネ)で商品を買うようになっているのです。
私たちが日々使っているおカネ(日本では円通貨)というのはこのようにして生まれたのです。

・貨幣の役割②

第二に、貨幣は流通手段としての役割があります。
流通手段の機能とは貨幣が商品の交換を仲介する役割のことを意味します。
商品経済の歴史からみると、交換行為の初期は物物交換でした。例えば、コメと靴、塩と衣服の交換といったように直接、所有者どうしが欲しいものをお互いに交換することから始まったのです。

しかし、貨幣が発生してからは物物交換ではなく貨幣が介在するようになったのです。
靴を浴しているコメの所有者がまず先にコメを売って貨幣を得てから、その貨幣で靴を買うという行為に変わったのです。要するに、おカネさえあればどの商品とも変えることが出来るので、まずおカネに変える行為が一般化していったのです。

こうして、商品交換が活発になるにつれ、商品交換の仲介者として貨幣が機能することになったのです。このように貨幣を仲介としておこなわれる商品交換を商品流通といいます。

貨幣の流通手段の機能と関連して付け加えておきたいのですが、今、私たちが使っているおカネは紙幣をはじめ小銭で使用している銅やアルミ、ニッケルなどの金属で作られた、いわば金貨の代理物がありますよね。
なぜ、このような紙幣や金でないものが貨幣として流通するようになったのでしょうか。

もともとは金貨が貨幣として流通していたのですが、流通過程において徐々に金貨の代理物が使われるようになったのです。と言うのも、貨幣が流通手段として機能する時は現金そのものが必要であって、商品の流通とともに貨幣としての金貨も流通するので、それが長期間にかけて繰り返し行われる過程で摩滅し、本来の貨幣重量を保つことが困難になるのです。
そこで、実質的重量と名目的重量間にちょっとした乖離が出来ることが、しばしばあらわれたのです。
そういう過程を経て、実際の価値(実質的重量)でなくても国が認めた名目的な価値(名目的重量)で通用できるようになったのです。
こうして、実質的価値と名目的価値が必ずしも一致しなくても貨幣は流通手段として、その機能を果たすことが出来たのです。その象徴が紙幣なのです。

紙幣は紙で作られており、その実質的価値は微々たるものですが、1万円札は1万円の価値物として、1万円の商品を買うことが出来るのです。
このように、国家によって強制通用力が与えられた貨幣記号がすなわち紙幣なのです。紙幣自体は応分の価値が無いにもかかわらず、法的に規定されたものとして価値を名目上、表している貨幣の代用物にすぎないのです。
本来は金そのものが商品の流通を仲介していましたが、現在は金の代わりに紙幣がその代役を果たしているのです。

ちなみに、日本の1万円札の製造コストは約4円だそうですよ。ということは1万円札の価値そのものは4円ということになります。しかし、1万円札は1万円の商品と交換できるのです。

ちょっと不思議な感じもしますが、現代社会においてこの紙幣が私たちの経済活動において、大変重要な役割をしているのは、日々の経験で味わっていることだと思います。

・貨幣の役割③

第三蓄積手段としての機能です。
蓄積手段の機能とは貨幣が富を蓄蔵する手段として利用されることです。
先にみたように、貨幣は一般的等価物として、いつ、どこでも、どの商品とも交換することが出来るので、後で必要な物やサービスを購入するために貯めておくことが出来ます。

簡単な言い方をすれば、人は財産として蓄積する場合、おカネで貯めておくことが一般的行為と言えます。勿論、土地や家屋などの不動産、ダイヤモンドなどの装飾品という形態で財産を所有することもありますが、結局はこのことも一定の貨幣額として計算されるのです。
そういう意味では、おカネが世に使われてからはおカネの形で財産を蓄積するのが一般的なのです。

この時、貯めておく貨幣を蓄蔵貨幣(蓄積貨幣)といいます。
例えば、企業の内部留保金や企業会計における現金・預金などもそうですね。
このように、商品生産社会において貨幣は社会的富の一般的形態なのです。

人間の物欲は誰しもがもっているのですが、商品・貨幣経済へ移行してからは、その性質が一変してしまうのです。つまり、コメなどの食料品は現物形態で富を貯める場合、一定の量的制限がありますが、おカネの形で財産を蓄積する場合は無制限に蓄積欲が出てくるのです。
要するに、コメを貯める場合はある程度の量があればそれ以上は要求しないのですが、おカネの場合はいくらあってもいいわけで、より多くの蓄積を望むのです。
言い換えれば、富の社会的表現である「貨幣を蓄積しょうとする意欲は限りなく高まり、致富欲から生まれる貨幣蓄積への衝動は無限」なのです。

現代社会において、おカネにまつわる災難や事件が後を絶たないのは、このことと関連していると言えるでしょう。貨幣蓄積欲が人間や人間社会そのものを変えると言っても過言ではないのです。
崇金主義や貨幣万能主義的な考えが横行しているのも、貨幣の蓄積手段としての機能と関連しているのです。

・貨幣の役割④

貨幣の第4の機能は、支払い手段としての機能です。
支払い手段としての機能とは、貨幣があらゆる支払い義務を履行するのに利用されることです。これは、商品の代金を一定期間が過ぎた後に支払う場合に貨幣が果たす機能と言えます。
私たちの日常生活において度々経験することですが、クレジットを利用して商品を買う場合、支払い期日が到来した時におカネを支払いますが、この時のおカネの役割が支払い手段としての機能です。

少し難しい言い方をすると、商品の譲渡と商品の価格の実現が時間的に分離することになるのです。必要とする商品を先にもらい、代金は後で支払うということです。家屋や自家用車などの高額商品を購入する場合、ローンを組んで長年にかけて代金を支払うことがほどんどのケースですよね。
この時、おカネは支払い手段として機能しているのです。

ところで、貨幣が支払い手段としての機能を果たすことによって、商品の売買における信用関係が発達するようになります。とりわけ、企業間の信用による連携と依存性が高まるのです。
現代社会において、業種にもよりますが企業間の売買は、ほとんど現金取引をしないですよね。これは企業間の信用関係が拡大している表れと言えるでしょう。
要するに、信用による債権・債務関係が拡大していくのです。

ところが、このことを裏返して考えてみると、この信用関係をもとに取引が増えていくと、万が一ある企業間の取引で信用関係が崩れると、社会全体の信用関係に影響して経済全体が混乱する可能性が出てくるのです。
日本でも、かつて企業と銀行間の信用取引が崩れることによって全体経済が金融危機に陥ったことも経験しているように、債権者と債務者の信用が連鎖のごとく結び付いている現代社会の盲点でもあるのです。貨幣の支払い手段としての機能において、こうした危険性を孕んでいるのです。

現金がなくても物やサービスを得ることが出来る信用売買の便利性の裏には、少し踏み外せば大きな混乱を招くというリスクが付きまとうことを忘れてはならないでしょう。

以上、貨幣の機能(役割)についてみてきましたが、現代社会においておカネ(貨幣)の果たしている役割がいかに大きいか、よくお解り頂けたと思います。

そこで疑問になるのは、そのように大事なおカネなので一国において可能な限りたくさんのおカネを流通させればいいのではと思ってしまうのですが、ところがそうではないのですよ。
無制限におカネが出回ると、かえって経済は混乱をきたすのです。
例えば、カネ余り現象で象徴的なことはインフレですよね。インフレが起きると物価が上がり、モノやサービスが買いにくくなるのです。
そういうわけで、国ごとにおカネの流通量を一定額に調整されているのです。

話が長くなりましたが、おカネ(貨幣)というものが如何にして生まれたのか、また私たちの生活において、どういう役割(機能)をしているのかについてまとめてみました。
おカネについての理解を深める参考にしてください。 

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