アプロ君のここに注目;金価格の高騰、今何故?

経済
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昨今、金への投資が注目されていますが、ここへきて金価格の高騰が世間の関心を呼んでいます。
去る12月1日の米ニューヨーク商品取引所で、金(ゴールド)の先物価格が3年4か月ぶりに史上最高値を記録しました。
日本でも4日、大阪取引所で金先物相場が大きく値上がりし、1982年に取引が始まって以来初めて1グラム当たり1万円台に乗せました。
そこで、最近の金価格高騰は今、もっとも優良な投資先として世間の関心を呼んでいます。
今回は、今何故、金価格が高騰しているのか、今後の見通しはどうなのかについてまとめてみたいと思います。

・最近の金相場の推移

最近の金価格の高騰には目を見張るものがありますが、実は金の価格はここ20年の間、大幅な上昇傾向にありました。
過去20年間の動きをみると、2000年は金1グラムあたり平均1,014円でしたが、2022年4月以降には1グラムあたり平均8,000円台前後まで上昇したのです。そして、今年の3月には9,000円台を突破し、その後も上昇傾向が続いていたのです。
そして、12月に入ると、ついに過去最高の1グラムあたり1万円台に乗せたのです。
米国では12月1日、金の先物価格が1オンス(約31.1グラム)=2089.70ドルと約3年4か月ぶりに史上最高値を記録したのです。

金は「有事の金」といわれ、国債情勢が不安定化しているときなどに値上がりする傾向があるようです。ここ20年間の動きをみても、2001年に起こった同時多発テロや2008年に起こったリーマンショック、2020年に発生した新型コロナウイルス、2022年に入ってからのウクライナ情勢や今年の中東情勢などを背景に金相場は上昇し続けていることがわかります。

・金価格高騰の要因

このような金相場の高騰には、どのよな要因が関係しているのでしょうか。
以下、その理由についてまとめてみます。

第一に、金の供給量が需要に対して追いついていないことです。
他の商品と同じように、金の需要が増えて供給が減ると金価格は上昇します。
金の場合、供給は鉱山生産量やリサイクルによる回収量などによって補われますが、主な供給源泉である鉱山生産量をみると、ここ数年金鉱山の開発案件はほとんど出ておらず、世界の年間金生産量は頭打ち状態が続いています。
その反面、需要面では金への投資や宝飾品の売れ行きが増えているのに加え、金は工業利用されており、近年では半導体など電子機器関連の需要も増えているのです。
このように、金の需要増加に対して供給が追いついていない状況が金価格の上昇を招いているのです。

第二に、金の需要が高まるなか、各国中央銀行による金の買いすすめが加速していることです。
各国の中央銀行は、対外債務の返済や緊急事態に物資を輸入するための備えとして、また外国為替相場の安定を図るための為替介入の原資として、一定の外貨準備を保有しています。その外貨準備の一部として金を保有するのです。最近ではリーマンショック後、投資家の米ドルに対する信頼が不安定になり、金の買い手が先行するため、中央銀行の判断が金相場の変動に直結することが多いようです。
また、近年ではソブリンリスクが高まり国の信用リスクが意識されるようになってから、新興国の中央銀行も特定通貨への依存度を下げる動きが強まっており、金がさらに買い進められている状況です。
このことが金相場を大きく上昇させている要因なのです。

第三に、世界的な低金利と関連しています。
金は保有していても金利が付きません。そのため金利が高い局面では、債券などを保有すれば得られる利益を逃してしまいます。しかし、金融緩和により金利が下がり預金に対する利子がほとんど付かない状況では、債券投資や預金ではなく金への投資が注目され金相場が上昇しているのです。
コロナショックから立ち直るのに、最近まで各国は低金利政策をとっていたのですが、低金利のために金保有によって逃す利益をさほど意識しなくてよかったことが、金への需要を押し上げてきたのです。

第四に、地政学リスクや経済に対する不安が高まっていることと関連しています。
地政学リスクとは、世界の政治経済の予測ができず、先行きを不透明にするリスクのことです。
政治的、軍事的な緊張の高まりが特定地域や世界全体に経済的悪影響を与え、ひいては世界経済の先行きに不安をもたらすと、安定した資産を求める人が増え、金の需要が上昇し、それが金相場を押し上げるのです。
先にみたように、この20年間の金相場の上昇傾向がはっきり表しているように、2001年の同時多発テロやリーマンショック、中東情勢の緊張など地政学リスクの高まりと金相場の上昇は密接なつながりを持っているといえるでしょう。

第五に、これらの要因とともに、日本においては昨今の円安傾向がが大きく関係しています。
日本では長年にわたり低金利政策がとられているのですが、アメリカではインフレを抑えるため、政策金利を2022年3月頃から段階的に引き上げてきたことで、日米金利差が浮き彫りになりました。これが最大の要因として、より高い金利を求めて円が売られドルが買われることで、円安ドル高になりました。
金の取引は世界中で行われており、基本的に取引はドル建てでおこなわれます。日本で使われる円建ての金価格は、ドル建てで決まる金価格をドル円相場で円換算したものです。そのため、円安傾向になると日本の金価格は上昇するのです。そういう意味では、トロイオンスで米ドル価格で取引される海外相場と為替相場の両方の影響を受けて、円安傾向が続く場合、日本の金相場は上昇するのです。

・金相場の今後の見通し

それでは、金価格の今後はどのような動きになるのでしょうか。私なりの見方をまとめてみます。
金相場が下がる要因は、以上でみたような上がる要因が解消していくことになります。なので、これらの上昇要因についての判断によると思われます。

そう考えると、すでにみた上昇要因がすぐに解消していく見通しが立たないというのが、率直な見方です。
直近の円安が円高に転換しつつあるようですが、中長期的なタームでみると円高が定着するとは断言できる状況ではないでしょう。というのは、昨今続いてきた円安傾向が主として日米金利差によるもので、日本が低金利政策をを維持するかぎり、一時的には円高になっても根本的にはドル高=円安傾向は続くでしょう。

金の需要に対しても、すぐに減るということは考えにくいでしょう。宝飾品や工業利用による需要だけでなく、各国中央銀行の通貨の代替としての金への需要は当面、減ることは考えにくでしょう。
また、地政学リスクについても、緊張が増しているウクライナ情勢や中東情勢も出口がみえない状況で不透明なままです。

このような諸状況をみると、今後も中長期的には金相場が上昇基調にあることは否定できないと思われます。ただ日本の場合、一時的にせよ円高への転換により短期的には若干の変動もありえるということを想定しておくべきではないでしょうか。

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