アプロ君のここに注目;メリットだけではない「新NISA」

株式

年初来の株価高騰の一要因として言われているのが、「新NISA」の開始です。
今年に入って始まった「新NISA」によって、個人の投資資金が株式市場にもかなり舞い込んでいて、これが株価を押し上げているというのです。証券大手ではすでに口座数が1,000万を超えているところもあるようです。
個人の関心が高まっており世間の注目を浴びているのですが、注意点も少なくないようです。
そこで、今回はこの「新NISA」とは何か、「新NISA」への投資における注意点などについてまとめてみます。

・ NISAとは

NISA(ニーサ)とは、国がつくった非課税で投資ができる口座のことです。通常の投資であれば、儲かった額に対して約20%の税金がかかりますが、NISAの口座にある投資商品はこの税金がかからず非課税となるのです。
たとえば、100万円で買った株が110万円で売れたとすれば、10万円の利益となり、通常の証券口座では、この利益の中から約2万円の税金が引かれ、実質的な手取り額は約8万円となります。ところが、NISAの口座にある投資商品は、この税金がかからず非課税となります。
なので、10万円の利益がそのまま手元に残るということになります。

NISAには、「一般NISA」と「積み立てNISA」という2種類がありました。
「一般NISA」は、上場株式や投資信託などを買っていくというもので、年間に使える金額の上限が120万円で、非課税保有期間は5年でした。つまり、保有限度額は600万円となっていました。
一方、「積み立てNISA」は、金融庁が定める一定基準を満たした投資信託などを積み立てて買っていくというもので、年間の上限は40万円、非課税保有期間は20年でした。

・「新NISA」の特徴とメリット

このNISAの投資額と非課税保有期間が今年の1月からより広げられたのが「新NISA」と呼ばれている制度です。
「新NISA」は従来の「NISA]に比べ、積み立て投資枠が年間40万円から120万円に、そして「一般NISA」による投資枠が年間120万円だったのが240万円に拡大されたことと、開設した口座が恒久化され、非課税保有期間も無期限になったことが主な特徴です。そのため、低額投資においては非課税で投資ができる可能性が拡がったわけです。そういう意味では、「新NISA」によって個人投資が、効率的にやりやすくなったと言えるでしょう。

・「新NISA」のデメリット

ところが、「新NISA」にもデメリットがあることを理解しておくべきでしょう。
そこで、いくつかのデメリットについてまとめてみます。

第一に、いわゆる「ナンピン買い」が難しいということです。
初心者の方にはわかりづらいかもしれませんが、「ナンピン買い」というのは、保有している銘柄の株価が下がったときに、その株を買い増しすることによって平均購入単価を下げる買い方をいいます。
たとえば、100万円の株を1株買い、これが50万円になってしまったら、さらに100万円で2株買えば、平均取得価格は約67万円になるので、株価が100万円になるまで待たなくても、67万円以上になった段階で売っても利益が出るということです。そして、この株がさらに値を下げて30万円になってしまったら、90万円で3株買えば、トータル290万円で6株持てるので、1株あたりのコストは約49万円で、株価が49万円以上になると、利益がでることになります。
これが「ナンピン買い」というものです。

ところが、「新NISA」では1年間で240万円までしか株を買うことができないため、同じように「ナンピン買い」で取得コストを下げようと思っても、上の例でみると230万円で4株しか買うことが出来ず、1株当たりの平均取得価格は約約58万円で、これ以上に株価が上がらないと利益は確保できなくなります。
しかも、「新NISA」の投資枠は240万円なので、すでに他の投資商品を買っていたら、その年は株価がどんなに下がっても買いますことが出来ないのです。
というわけで、株式投資の自由度が低いと言わざるを得ません。

第二に、損益通算ができないことも見逃せません。
損益通算とは、赤字部分と黒字部分を相殺することをいいます。
たとえば、「新NISA」の投資枠は小さいので通常の証券口座も持つという場合、A社の株を「新NISA」で100万円で買い、B社の株を通常の証券口座で同じく100万円で買ったとします。この場合、2つの株を売る時に、A社の株が70万円になってしまい、B社の株が130万円に上がっていたら、両方が通常の証券口座なら赤字から黒字を差し引いて儲けはゼロにすることができるため、税金を納めなくてもいいというわけです。ところが、A社の株が「新NISA」の口座にある場合には、この損益通算ができないので、B社の株の利益である30万円に対して、約6万円の税金を払わなくてはならないのです。

第三に、損失の繰り越しが出来ないという点です。
損失繰越とは株取引で出た損失を、翌年以降に最長3年間繰り越しができるというものです。
例えば、200万円で買った株を100万円で売らなくてはならんくなったら100万円の損失になるますが、通常の口座ではこの損失は翌年以降に繰り越されます。なので、次の年に50万円の利益が出て、その次の年にまた50万円の利益が出たとしても、損している100万円を最長3年間は使えるので、儲けに対して税金を支払う必要が無くなります。
「新NISA」の口座でしか投資しない人にとっては、この問題は気にしなくてもかまわないのですが、本格的に投資をする人にとって「新NISA」は枠が小さいので別途に証券口座を持つような場合にはデメリットになると言えるでしょう。

以上のようなデメリットの他にも、「新NISA」の口座は一人に1口座しか持てないし、その年に売買できる金融機関は1社だけということ、投資枠が空いたとしても次の年に持ち越すことが出来ないということで、タイミングを見て売ったり買ったりといった機動的な売買で儲けたいという投資家にとっては不便で、結果的には買ったらずっと持っているようなことになりかねないのです。

また、積み立て投資の場合を見ても、投資初心者にとっては投資というものは長期で資産形成していくもので、長期投資をすれば自然と金額が膨らんでいき安心だという思い込みに陥りやすいことも警戒すべき点ではないでしょうか。

そもそも、投資はリスクを伴うもので、順風満帆に右肩上がりで利益が増えていくことはあり得ないことは言うまでもないでしょう。
日本の過去の株式相場のデータがはっきりと示しているように、上下の変動を絶えず繰り返しているのであって、その過程で利益を得る人もいれば、逆に大きな損失を被る人も少なくないのです。
今年から始まった「新NISA」はメリットも勿論あることは確かですが、以上みたようなデメリットもあるということをしっかりと見定めたうえで、取り組むことが重要ではないでしょうか。

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