アプロ君のここに注目;急増する企業倒産

企業動向

年初来の株高はついにバブル期の最高値を超え、今や4万円台も現実味をおびてているのですが、その反面、企業倒産も急増しているようです。株式相場の活況の中で、株価急騰に対する懸念も出始めている中での企業倒産の急増をどうみるのかが、市場関係者の関心を呼んでいるところです。
そこで、今回は企業倒産急増の実態にアプローチしてみることにします。

・企業倒産急増の実態

東京商工リサーチによると、2023年の全国企業倒産件数(負債総額1000万以上)は前年比35.1%増の8690件となり、2年連続で増加したようです。8000件台は4年ぶりで、負債総額も前年比3.0%増の2兆4026億4500万円に至っています。
昨年の倒産件数の増加率は1992年以来、31年ぶりのことで深刻な事態と言わざるを得ません。

また、帝国データバンクの発表によると、今年1月の全国企業倒産件数は前年同月比で28.2%も上回る300件となり、増加の勢いが弱まる気配がないようです。
ちなみに、2022年5月以降21ヶ月連続で前年同月を上回る状態が続いているのです。
このままいくと、今年の倒産件数は1万件を超えるとの見方も出てきている有り様です。

このような現状に加え、信用保証協会付き融資の代位弁済件数も急増しており、全国的にみると2021年12月の1838件から、2023年12月には3972件と2倍以上の増加となっているのです。
また、「死にたい企業」とみなされている、いわゆる「ゾンビ企業」も増加しており、このような状況を踏まえて、今年度の企業倒産は1万件超が確実視されているのです。

・「ゾンビ企業」の増加

企業倒産に拍車をかけているのが「ゾンビ企業」の増加です。
「ゾンビ企業」とは国際決済銀行(BIS)が定義する、いわゆる「死に体企業」という意味合いで、業歴10年で営業利益+受取利息配当金が金利支払いを下回っている企業のことをいいます。簡単にいいますと、借り入れで事業をやっても利息分の儲けも出ない企業のことです。

この「ゾンビ企業」の実態をみると、2021年度の約19万6000社から22年度は5万5000社増えて、25万1000社に上ります。こうして「ゾンビ企業」は3年連続の増加になっているのです。
この25万1000社について、もう少し詳細に分析すると、まず収益力については14万4000社が経常赤字に陥っており、全体の57.4%にあたります。
また、過剰債務状況をみると、有利子負債が月商の8.5倍以上の企業が10万4000社で、これは全体の41.5%になります。加えて、資本力については債務超過企業が9万5000社で全体の37.7%にのぼっています。そして、3項目すべてに該当する企業は4万1000社で、これは全体の16.4%となり、1年で約8000社増えたことになります。
このように、企業の「ゾンビ化」が企業倒産の約30倍に膨れ上がっているのです。

企業の「ゾンビ化」の急増の背景としては、コロナ禍で困窮する中小零細企業の資金繰りを支えるために国策として実施された、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」がゾンビ企業の延命につながったたということが指摘されています。
「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍という災害によって企業活動が制約されたことで、資金繰りに支障をきたすことを防ぐため、一定条件を満たす企業に対して、審査条件を大幅に緩和した制度融資を流し込んで、企業破綻の大量発生を回避した国策です。これにより、平常時なら市場から退場させられるはずの企業が、コロナ禍によって資金繰りに影響を受けていた中小企業をはじめ数多くの企業が救済されたのです。ところが、コロナ禍がおさまり、返済据え置き付きの「ゼロゼロ融資」の返済開始がはじまると、一気に資金繰りが懸念される企業が表面化したのです。

このような「ゾンビ企業」の動向は、当然に今後の企業倒産動向にも大きく影響を与えることになるでしょう。金融機関の支援スタンスの変化次第で、今年度の倒産件数が大幅に増えるおそれがあると言えるでしょう。

・企業倒産急増の中での株価の高騰をどうみる?

さて、上述したように足元の企業動向は中小企業をはじめ、決して状況が上向きにあるようには思えません。そんな中での株価の急騰をどう捉えるべきでしょうか。

上場企業の株価は企業の利益が全体として上向きにあり、経営状況が回復していることへの反映というよりかは、円安を背景にした外国投資家の資金が主として押し上げている側面が大きいと言われています。ましては国内の中小零細企業の経営状態は全体としてコロナ禍のダメージから大きく改善しているとは考えにくいのです。

株価がバブル期の最高値を超えたにもかかわらず、社会全体としては実感がないと言われていますが、これは今の企業の実態からも言えることではないでしょうか。
このような実体経済を反映して、今の株価をあきらかにバブルとみなす専門家も少なくないのです。

勿論、企業格差がはっきり出てきてはいることも否定できないのですが、直近の株式相場の活況ぶりは企業全体の実像からして、首をかしげてしまいますね。
バブルは必ず弾けるものですが、今後の推移に懸念せざるを得ない思いが強くなるばかりですね。

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