アプロ君のここに注目;日本の労働生産性なぜ低い?

労働経済
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先日、とあるシンクタンクの調べによると、日本の労働生産性がOECD(経済協力開発機構)に加盟する38カ国中38位と過去最低になったようです。去年に比べ順位を2つ下げて1970年以降最低になったのです。日本の労働生産性は長らくOECDのなかで20位前後を維持していたのですが、2019年から一気に順位を下げているのです。
このような労働生産性の一面から「先進国からの脱落」との評価も出ているようです。
それでは、何故日本の労働生産性がここまで下がってきているのか、今後労働生産性を高めていくための課題はなにかについてまとめてみます。

・労働生産性とは何か

一般的に生産性とは、生産のための資源をどれだけ有効に活用できているかを示す度合いのことです。
労働生産性の場合、労働投入量に対してどれだけの産出量が生まれたかをあらわす概念です。言い換えれば、単位当たりの労働力に対する産出量のことです。
なので、労働生産性は産出量を労働投入量で割る計算式であらわすことができます。
そしてこの場合、産出量は物的生産量と付加価値額であらわすことができますが、物的生産量を労働投入量で割った式であらわしたものを物的労働生産性といい、付加価値額を労働投入量で割ったものを付加価値労働生産性といいます。
要するに、労働生産性とは、労働投入量に対してどれだけの物的生産や付加価値を生産するかを示したものといえます。

・労働生産性が注目される理由

それでは今何故、労働生産性が注目されているのか、その理由についてみましょう。

第一に、人口減少と少子高齢化などによる労働力不足と関りがあるのです。
生産性が注目されている背景には、人口減少による労働力不足が横たわっているのです。
現在の日本の総人口は約1億2,000万人ですが、2050年には1億人まで減少すると言われています。これを労働人口でみると、2020年に6,400万人だったのが、2050年には4,600人まで減少するとされています。少ない人数で現在と同等以上の生産量(付加価値額)を生まなければならないので、経済成長のためには生産性向上を加速させていかなくてはならないのです。

第二に、急激な物価の高騰とも関連しています。
昨今、物価の高騰が国民の生活負担に拍車をかけているのは言うまでもないのですが、、これは企業にとっては原材料や人件費、エネルギーが高騰することを意味し、この負担を価格に転嫁するだけで吸収するのはなかなか難しいことです。値上げにより需要減を引き起こし、売り上げが減るリスクがあるからです。なので、その分生産性を上げるか、イノベーションを起こして新たな収益の柱をつくることが必須となるのです。

第三に、国際競争力を高めるうえで不可避な条件になるということです。
上術したように、将来的な人口減少に伴い、今後日本では内需が縮小していくことが見込まれています。なので、必然的に企業はより一層グローバル市場に売って出なければやっていけない時代がくることは想像に難くないでしょう。
現在、日本の国際競争力は世界で34位とも言われています。1990年代はじめには1~2位を占めていたのが、年々下がり続けて今に至っているのです。この原因は「ビジネス効率性」の落ち込みと関わっているのです。要するに生産性を高め企業の「ビジネス効率性」を高めることが、日本の企業において国際競争力を高めるうえで不可欠な課題になっているといえるのです。

・生産性を高めるための課題

では生産性を高めるためにはどのような工夫が必要なのでしょう。
次にその課題について触れてみます。

まず最初に言えることは、デジタルテクノロジーを積極的に活用しビジネスの効率性をあげることが大事でしょう。とりわけ、中小企業においては資本装備率の低さが生産性の低さに直結しているだけに、ITツールの導入によるデジタル・トランスフォーメーションは必須だと言えるでしょう。業務改善だけでなくデータの蓄積と活用によって、ビジネス変革に繋げる可能性も広げておくことも重要ではないでしょうか。

また、人的投資により、継続的に生産性を高められる組織へ変革していくことも要求されます。
市場環境が急速に変化しつつあるだけに、必要とされるスキルも日々移り変わっていきます。このような変化に対応すべく、研修や学び直しなど社員のリスキングに積極的に投資し、継続的に生産性を高められる組織へ変革する必要があるでしょう。

目先の業務効率化だけでなく、イノベーションを起こし付加価値を高めることも必要でしょう。
そのために、多様な人材、多様な働き方の推進が望まれます。人材の多様性については、たとえば属性に依存しない公平な評価制度の導入、育児や介護休暇の導入、時間と空間に依存しない働き方の推進などが考えられます。

マネジメントの父とも言われているピーター・ドラッカーは「生産性とは、最小の努力で最大の成果を得るための、生産要素間のバランスのことである」と強調しているのですが、労働者の働く時間を減らしつつも、成果を高めるために、その他の生産要素を効率的にマネージメントすることができれば、おのずと生産性は向上するのです。

かつて労働者の肉体労働を代替して機械設備が導入されたことによって生産性が急速に向上したのですが、今や単純な機械設備をはるかに超えてAIが人間の知能までも代替するところまで来た現代社会において、生産性の向上がより加速していくこては疑いの余地がないでしょう。

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