アプロ君のここに注目;どう見る、新札発行の経済効果とキャッシュレス化 

経済
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去る7月3日、約20年ぶりに千円札、5千円札、1万円札の新札が発行されて3週間が過ぎようとしていまます。すでに、ほとんどの人が手にとって拝見していると思いますが、なんだか以前と比べてデザインが簡素化されているというか、分かりやすいデザインにになっているような気がします。
それはともかく、世間では発行前から新札に描かれている人物像や経済効果について話題になってはきたのですが、いざ発行されてみると、少々あっけない感じがしないでもないですね。
そこで、今回は新札発行の目的や経済効果についてまとめてみようと思います。

・新札発行の主な目的

今回の新札発行は、以前まで流通されていた紙幣は2004年から発行されたモノなので、それ以来約20年ぶりの新札発行となります。
すでに、2019年4月9日に財務省が発表した予定に沿っておこなわれたのです。
周知のように1万円札は渋沢栄一、5千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎の肖像がそれぞれデザインされているのが大きな話題を呼んだのですが、印刷技術もより高度なものになっていて、肖像が三次元に見えて回転する「ホログラム」になっています。実際に見ると不思議な感じもするのですが、動かして角度を変えると肖像画動いて見えるのですね。他にも要所に最先端技術が利用されているようです。

加えて、誰でも利用しやすい「ユニバーサルデザイン」が導入されていて、指で触って券種を識別されるように工夫されていることや、額面の数字を大きくし、券種を識別しやすくする工夫などが施されています。実際の紙幣を見ると確かにそのようです。

このように、最先端技術を使って印刷されているのは、他でもなく紙幣の偽造を防ぐためなのです。
一般に、新札発行から時間が過ぎると、技術が腐敗化して偽造のリスクが高まるのです。そこで、
20年に一度の頻度で新札が発行されてきたのですが、今回も前回の紙幣発行から約20年程経過したため、新札発行に至ったようです。

財務相によれば、現在発行している紙幣は2004年に発行を開始して以来、20年近くが経過し、その間に民間の印刷技術が大幅な進歩を遂げていること、また目の不自由な方や外国人のためにも、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた紙幣デザインが世界の潮流あることなどを踏まえ、より偽造しにくく、誰にとっても使いやすい紙幣となるようにするため、改刷を実施したとしています。

・新札発行の経済効果

さて、今回の新札発行の経済効果についてですが、各メディアでも紹介しているように、総じて1兆6千億円程度の経済効果があると推定しています。
経済効果を試算するにあたって、発生するだろうと思われる直接な需要として主に3つのコストがあげられています。

一つは、新紙幣の発行に伴う発行コストが発生すること、次に新紙幣に対応するため金融機関のATM、CDの改修、買い替えコストが発生すること、そしてそれとともに、自動販売機における改修、買い替えコストが発生することなどがあげられます。
これらのコストを合計すると、今回の新紙幣発行による直接的な需要は、おおよそで約1.6兆円が見込まれるとのことです。そこに、関連する産業への間接的な波及効果も含めて生産誘発額を試算すると、その額は約3.5兆円が見込まれるようです。
このような新札発行による「特需」は、直近2年間の経済成長率を最大でプラス0.1ポイント程度の押上効果があると予測されています。

ただ、これらの試算はかなり不確定要素もあると言わざるをえないでしょうね。
というのは、キャッシュレス化の進展に伴い、新紙幣や通貨の流通量が減少する可能性があることや、金融機関や飲料メーカー、飲食関係の小売業者などはATMや自販機などの改修によるコスト負担を強いられるため、他の設備投資を縮小することなど、収益性の低下や実体経済に悪影響を及ぼすことも否定できないでしょう。

今回の新札発行がもたらす副次的な効果として、総額50兆円とも言われる「タンス預金」のあぶり出し効果も期待できるといった憶測もあるようですが、実際にはその効果はそう大きくはないでしょう。
というのは、新札を発行しても旧札は使い続けることができるということ、また「タンス預金」持つ人が旧札を新札に替えることがあっても、「タンス預金」の金額は変わることはなく、新札発行をきっかけに「タンス預金」を取り崩して消費を拡大させるといった効果は期待できないでしょう。

・新札発行とキャッシュレス社会

日本銀行が1885年から140年にわたって発行してしてきた紙幣は、これまで数回にかけて改札されてきたのですが、今回の新札発行がキャッシュレス化が進んでいる中での発行になるということで、今後広く利用される紙幣として流通されるのか、ちょっとした関心事になっています。

キャッシュレス化とは、決済方法が現金決済からキャッシュレスに切り替わっていくことですが、日本の現状をを見ると、キャッシュレス決済比率は年々増加傾向にあって、2020年には約3割にまで至っています。ただ、カナダの62%,イギリスの57%、アメリカの47%など、外国に比べるといまだ低い水準にとどまっており、日本では依然として現金決済の割合が高いことがわかります。

政府はこの進展状況を受けて、2018年に策定された「キャッシュレス・ビジョン」や2019年に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」の中で、キャッシュレス決済比率を今後2025年6月までに、40%程度まで引き上げる目標を掲げているのです。

このように考えると、今後日本でも現金利用が大きく減少することが想定されます。聞くところによると、いわゆる「中銀デジタル通貨」の発行も向こう数年のうちに正式に決まる可能性があり、2030年代には実際に発行されるのではないかと言われています。
そうなれば、キャッシュレス化は一気に進み、現金の流通も抑制され、今回の新札の流通もいずれ大きく減少するのではないかと考えられます。

現実感覚としてはいささか想像しにくいところもありますが、今回の新札発行が最後の紙幣になるという歴史的なことにもなりかねないことを思うと、感慨深いものがありますね。

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