アプロ君のここに注目;まだまだ増えそうな「物価高倒産」と「人手不足倒産」

企業動向
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3月のブログに「急増する企業倒産」と題して記事をまとめてみたのですが、その後もますます企業倒産が増え続けており、目が離せない状況になりつつあります。とりわけ、物流や運送業界の人手不足による倒産が顕著にあらわれています。
そこで、建設業や物流・運送業界に今、何がおきているのか、倒産急増の実態に迫ってみようと思います。

・急増する「物価高倒産」と「人手不足倒産」

帝国データバンクが発表した「全国企業倒産集計」によると、今年の上半期(1月~6月)の企業倒産件数は前年同期比22.0%増の4887件(負債総額1千万円以上)に急増しています。上半期としては2014年の4756件以来、10年ぶりの高水準のようです。

なかでも特に目立ったのが「物価高倒産」と「人手不足倒産」で、いずれも過去最多を更新したようです。「物価高倒産」は484件で、前年同期の375件を大幅に上回り、29.1%の増加になりました。このペースで推移すれば、年間合計で900件を超える可能性があると見込まれています。
業種別では建設業が124件ともっとも多く、次いで製造業が109件、運輸・通信業が91件となっています。

「人手不足倒産」をみると、182件で前年同期の110件から大幅の増加で65.5%増となり、こちらも年半期ベースで過去最多を更新しました。年間合計で昨年の260件を大きく上回るのは確実視されています。業種別では、建設業が53件で最も多く、全体の約3割を占めており、次いで運輸・通信業が44件で
前年同期の20件から倍増しているのです。

・物流・運送業界の「2024年問題」

従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」は、いわゆる「2024年問題」の影響と大きく関係しています。
物流・運送業界の「2024年問題」とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課せられることで生じる問題の総称のことです。具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、1人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなることが懸念されているのです。

働き方改革関連法に伴い労働基準法が改正され、一般的に時間外労働は原則月45時間、年間にして360時間に規定されました。しかし、物流・運送業界は事業や業務の特性上別の扱いになり、年間960時間の上限制限が適用されたのです。また、この規定は2024年3月までは猶予があたえられ、4月から実際に適用されることになったのです。ちなみに、物流・運送業のほか建設業や医師などもこれと同様の扱いとなっています。

今年の4月からこの規定が適用されているため、物流・運送業界の売り上げが減少し、ドライバーの収入が減少し、これがドライバー不足を招くことになっているのです。
このままでは、物流の3割以上が輸送出来ない可能性も憂慮されているようです。また、ドライバーの労働時間が短くなると1日の運搬料が減少し、運送業の売り上げや利益にも当然影響を及ぼしているのです。
このように、物流・運送業界における「人手不足倒産」は、円安による物価高による影響だけでなく、「2024年問題」に大きく関わっているのです。
今後も、この「2024年問題」は物流・運送業に大きく影響を与えることが予想されるでしょう。

・見逃せない小規模事業者の企業倒産

以上みたように、「2024年問題」の影響を受け、建設業や物流・運送業での倒産が過去最多を更新しているのですが、従業員10人未満の企業が全体の約8割を占めていることも看過できないでよう。
かたや、上場企業の株価は史上最高値を更新している反面、足元の小規模事業者は物価高や人手不足に追われ、苦境に追いやられているのが現実ではないでしょうか。
今後も小規模事業者を中心に倒産に追い込まれるケースが増加する可能性があることは否定できないでよう。

厚生労働省の調査によると、今年5月時点の就業者数は6766万人となり、足元では人手不足感は高水準ながらも、低下に転じる兆しもみえるのですが、その一方で転職等希望者は1000万人を超え過去最多を更新するなど、労働市場の流動化が加速しています。
従業員の少ない小規模事業者では、退職者が出ればダメージが大きく、事業継続そのものを脅かすことにもなりかねないのです。今後、労働市場の流動化により小規模事業者をはじめ、事業継続の断念につながるケースが増えることが想定されるでしょう。
そういう意味では、いわゆる「企業格差」がよりはっきりと露呈していくことが考えられます。

ある調査によると、企業の想定為替レートは平均1ドル=140円台とみています。だとすれば、実勢レートとは20円近くの乖離があるのです。企業側の想定を上回るスピードで進む円安は輸入物価の上昇を通じて企業収益をさらに悪化させ「物価高倒産」もさらに増え続けることが想定されるでしょう。

小規模事業者の閉鎖や廃業なども含めれば、今後さらに多くの市場退出が余儀なくされることが考えられるでしょう。

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