アプロ君のここに注目;利上げにも動じない円安、何が問題?

円相場

周知のように去る19日、日銀は11か月ぶりに利上げに踏み切りました。政策金利をこれまでの0.5%程度から0.75%へと1995年9月以来30年ぶりの高さに引き上げたのです。輸入物価の上昇をもたらす円安が進行していることに加え、来春の賃上げを見越しての判断としていますが、利上げ後も円安は一向に歯止めがかからないでいます。そこで、今回は日銀の利上げにもかかわらず円高に転換しないのはなぜか、昨今の円安の原因は何かについてまとめてみます。

・日銀の利上げとその影響

そもそも利上げとは中央銀行が行う金融政策の一つで、政策金利を上昇させることを意味します。政策金利とは、金融政策の目的を達成するために設定される金利のことです。
利上げが実施されると市場全体の金利が上がり、住宅ローン金利や企業融資の金利も高くなります。つまり、個人や企業がお金を借りにくくなるという影響があるのです。

中央銀行が利上げを実施する主な理由は、過度なインフレを抑制することです。経済が過熱し、物価上昇率が目標水準を大幅に上回る場合、金利を引き上げることによって社会全体の経済活動を適度に抑制するのです。高い金利は借入コストを上昇させるため、企業の設備投資や個人の消費活動を抑制する効果があり、その結果、需要が減少し、物価上昇圧力が和らぐことになるのです。
また、高い金利は通貨の価値を高める傾向があるため、輸入品の価格下落を通じてもインフレ抑制に寄与します。

中央銀行が利上げを決定すると、その影響は段階的に経済全体に広がっていきます。
まず、金融市場で即座に反応が現れ、債券価格の下落や株式市場の変動が一般的に見られます。
短期的には、借入金利の上昇により企業の資金調達コストが増加し、個人の住宅ローンや消費者ローンの負担も重くなります。反対に、預金者にとっては預金金利の上昇が期待できます。
中長期的には、利上げによる需要抑制効果により物価が安定し、経済全体の健全性が維持されます。ただ、利上げのタイミングや上げ幅が適切でない場合、経済成長を鈍化させることや、マイナス効果を発生させるリスクもあるため、慎重な判断が求められます。

このように、利上げは中央銀行が景気や物価のバランスを取るために行う重要な金融政策なのです。

・利上げに動じない円安

さて、今回、日銀は政策金利を0.5%から0.75%へと0.25%引き上げ、1995年以来30年ぶりの最高値に利上げしたのですが、それに対する市場の反応は意外と少なかったようです。

日銀は昨年3月、17年ぶりにマイナス金利政策を終え、7月に政策金利を年0.1%から0.2%に、そして今年の1月には0.5%に引き上げたのですが、市場に大きな波紋を広げ円相場は急速に値上がりし、昨年の8月初旬には一気に144円台の円高に転換しました。

ところが、今回は円安が是正されるどころか、利上げをした直後に円が2円も安くなるという非常に珍しい事態がおき、日銀の思惑通りに利上げの効果を発揮していないのです。

それとは別に、大きく反応したのは債券市場の長期金利が急速に上昇したことです。
利上げ発表後、東京債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが上昇(債券価格は下落)し、一時2.100%と1999年2月以来、約27年ぶりの高水準に至ったのです。

要するに、本来は利上げを通して円高へと誘導し、物価高が是正される流れを見込んでいたのが、まったく予測通りにいかず、裏目に出てしまったということです。
円安の最大の要因とされている日米金利差は今回の日銀の利上げにより、確実に縮まっているのですが、円安は依然と続いており円相場は年初とほぼ同じ水準にあるのです。

・円安の原因

なぜ、このような事態に陥っているのか、最大の原因は日本の財政不安にあると言えるでしょう。10月に発足した高市政権は、21.3兆円規模の総合経済対策を打ち出し、一般会計からの支出は17.7兆円、合わせて2.7兆円の減税も実施することを決定しました。
また、去る臨時国会においては、景気浮揚のために18兆3034億円規模の補正予算を可決させました。

すでに日本経済はインフレ状況にあるにもかかわらず、高市政府はデフレ脱却を目指したアベノミクスの施策を引き継ぎ、緩和的な金融政策と拡張的な財政政策を組み合わせた、いわば通貨膨張的なリフレ政策に固執しています。
物価を抑制し、財政健全化を急がなければならない状況下で、財源なき積極財政や財政健全化のコミット低下は財政悪化に直結し、結果として国債発行は増え、それと同時に国債の格下げと財政破綻のリスクは上昇します。

物価上昇の中で財政出動を増やし拡張的な財政政策に固執すると、物価はさらに上昇しやすくなり、それに伴って財政悪化と悪い金利上昇は深刻化し、財政破綻の懸念すら高まるのです。

そうした懸念から円売り、債券売りが起きているのであって、直近の円安と長期金利の上昇はその端的な表れと言えるでしょう。 
要するに、高市政権下の積極財政による財政悪化への懸念が円売りと債券売りを加速させており、そのことが現在の円安の元凶なのです。

今こそ、政府は日本経済の実力の向上と財政健全化に向けた政策へと舵を取るべきなのであって、その対応が遅れると日本の経済環境は一段と厳しい状況に陥ることも想定されます。

いずれにせよ、円安の是正と物価上昇の抑制を主眼とした今回の日銀の利上げが、はっきりとした効果が得られていない現状を見ると、今後、物価高になかなか有効な手が打てない状況が続くことが予想されるでしょう。

にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 経済ブログ 経済情報へ
にほんブログ村

ブログランキングに参加しています。上のバナーをクリックして応援お願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました