昨今、物価の値上がりが続く中、家計の負担が増していることは言うまでもないでしょう。
家計の厳しさを示すデータはいろいろあるのですが、その中でも今、注目せざるを得ないのがエンゲル係数です。以前にも、ブログでエンゲル係数についてはふれたのですが、主に食文化との関連でみましたが、今回は物価との関係からその後のエンゲル係数の状況をアプローチしてみたいと思います。
参考になれば幸いです。
・エンゲル係数とは
そもそも、エンゲル係数とは何かについて確認しておきましょう。
エンゲル係数は家計消費支出に占める食糧費の割合をあらわしたもので、「食費÷家計消費」で計算されるのです。なので、食品の消費量や食品の価格が上がれば係数は上昇し、逆に家計支出全体が増えれば係数は下がることになります。
19世紀のドイツの統計学者エンゲルが説いた法則に由来するものですが、「収入が少ないと飲食に充てる割合が高くなる」ので係数は高くなり、それは経済的に苦しいことをあらわし、暮らしが豊かになれば食費以外の支出が増え、係数は低下するとされていました。
このように、エンゲル係数は人々の暮らしや生活水準をあらわす経済指標の一つとして古くから取り上げられてきたのです。
・日本のエンゲル係数の推移
先のブログでもふれましたが、日本のエンゲル係数は1960年代前半は40%近くもあったのですが、その後は低下が続き95年頃からは大体23%台で推移していました。
ところが、2005年頃から上昇基調に転じ、2014年には24%を超え、2015年には25%を突破しました。その後はおおむね25%~26%台を推移してきたのですが、2020年代に入っては27%を超えるようになってのです。
総務省の家計調査によると、全世帯ベース(2人以上世帯)の今年1月~8月の平均でエンゲル係数は27.3%となりました。これはなんと39年ぶりの水準なのです。
また、2022年9月~2023年8月までの12か月間累計のエンゲル係数は1980年以来、最高の29.0%でした。
こうみると近年、確実に日本のエンゲル係数は高止まりしているといえるでしょう。
・エンゲル係数高止まりの原因
そもそも、エンゲル係数の上昇傾向の原因として、食品価格の上昇や消費支出自体の減少、あるいは社会的な要因として共働き世帯の増加による外食や中食の増加など、いろいろなことが考えられます。
食文化の変化も見逃せない要因としてあると思います。
現代社会においてエンゲル係数が低くなることが必ずしも生活レベルを表すものではないという見解もあるようですが、これはおもに食文化の変化を根拠としているようです。
ただ、食費以外の支出が相対的に減っている傾向には間違いないので、その点では少し憂慮する側面もあるということは否めないと思いますね。
しかし、直近のエンゲル係数の高止まりの原因として考えられるのは、直接的には昨今の円安による輸入物価の高騰とそれによる消費者物価の上昇があります。
食糧自給率が低い日本において、円安により食料品価格が消費者物価の中で目立って上昇していることで食糧費負担が増え続けたことが主な原因と考えられます。
消費者物価指数をみると、頻繁に購入する生鮮食品を含む食品などに絞った物価指数は、上昇していて9月は前年同月比9.1%の上昇で、比較可能な2011年以降で過去最高の上昇率でした。
このように、近年のエンゲル係数の高止まりは、主として円安による食料品の物価上昇が関わっていることは間違いないのですが、注目すべきはこのような状況のなかで、明らかに家計の負担が重くのしかかっていることには疑いの余地はないでしょう。
このように考えると、生活水準を示す指標とされているエンゲル係数の高止まりは、現在の家計における厳しい状況を反映しているのは否めないのではないでしょうか。
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