アプロ君のここに注目;物価高を助長しかねない「物価高対策」に募る懸念

物価

値上げラッシュは収まる気配がなく物価高は一向に解消する見込みが無い中、高市政権の「物価高対策」に世間の注目が集まっています。そんな中、「物価高対策」の一環として発行される「おこめ券」がちょっとした物議をかもしだしているようです。
今回は、政府の「物価高対策」に対してコメントしてみます。

・高市政府の「物価高対策」

物価高対策を最優先課題として掲げている高市首相は、21.3兆円規模の総合経済対策を打ち出し、一般会計からの支出は17.7兆円、あわせて2.7兆円の減税なども実施することを決めました。これは、2023年、24年の約13兆円の対策を上回るものです。
また、補正予算案に各自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」を2億円計上し、このうち食品価格の高騰に対応するとした「特別加算」に4000億円を充てることにしました。
ただ、高市首相は減税などの財源を明示せず、基礎的財政収支の黒字化に単年度ではなく、数年単位で取り組む方針を表明しています。

直近の措置として注目されているように、ガソリンの暫定税率の廃止や給付付き減税や補助金、コメ価格高騰を受け、おこめ券の配布など財政拡張的な措置を打ち出していますが、高市政府のこれらの「物価高対策」は、デフレ脱却を目指す「リフレ政策」を主眼としているようです。
リフレ政策とはデフレ脱却のため、金融緩和や財政出動で景気を刺激し、緩やかなインフレを引き起こす政策のことで、緩和的な金融政策と拡張的な財政政策を組み合わせる政策です。
まさしく、デフレ脱却を主眼としたアベノミクスの継承と言えます。

しかし、現在、日本はインフレ状況にあり、それにもかかわらずデフレ脱却を主眼としたリフレ政策にこだわるのですから、はたしてその経済効果がいかがなものか、首をかしげてしまいます。
また、高市政権の時代錯誤的な発想そのものへの疑念が高まるばかりです。

・物議をかもす「おこめ券」の配布

物価高対策の一環として配布される「おこめ券」に対して不評が目立っており、物議をかもしているのですが、これが果たしてコメ価格が高騰し続ける現状のもとで物価高対策として、どれほどの効果があるのか疑念を抱かざるをえません。現に、つい先日の発表にもあるように、コメの平均販売価格は最高値を更新しているのです。そんな中、「おこめ券」が配布されても、わずかな一時しのぎに過ぎず、コメの高騰にはなんの効果もないのです。つまり、「物価高対策」としての経済効果は期待できないということです。

そのうえ、現状の価格高騰を肯定するかのごとく、農水省は手の裏を返したかのよに「需要に応じた生産」に舵を切り、生産を減らす方向へと転換させたのです。
そもそも、「需要に応じた生産」という表現は1970年代以降続いた減反政策の決まり文句であって、「令和の米騒動」という昨今のコメ価格高騰の根本原因は、この減反政策にあるにもかかわらず、数か月もならないうちに政策転換させることへの疑念が高まっているのです。

少なくても、石破前政権は8月にコメの価格高騰を受けて農業者が増産に前向きに取り組めるよう支援することを表明し、これまでの「生産調整」という事実上の「減反政策」に区切りをつけ、2027年度以降にコメの増産へ舵を切るとして農政の大きな転換を示したばかりでした。
それが、新政権に変わるやいなや、手の裏を返したように、増産という方針を撤回させたのです。

備蓄米を放出するなどコメの価格の引き下げに積極的だったのに対し、価格はマーケットの中で決まるべきとして、備蓄米放出など価格抑制には否定的な発言を繰り返し、昨今の価格高騰を事実上容認する政策に出ているのです。
その代わりとして打ち出された処置が「おこめ券」の配布なのです。果たしてこの対応が、物価高対策としてどれだけ国民の支持が得られるのかはなはだ疑問です。

「物価高対策」は本来、「物価の上昇を鎮静化させ物価を安定させるための対策」であるべきであって、上辺だけの一時しのぎの処置であってはならないはずです。

・「物価高対策」への懸念

高市政権が打ち出した約12兆円の赤字国債発行が盛り込まれた総額21.3兆円の大型経済対策に対し、懸念の声も少なくないようです。
なにより、拡張的な財政政策により財政悪化への懸念です。大規模な財政出動により財政悪化をより深刻化させるだけでなく、「円売り」を加速させ金利が上昇し財政破綻のリスクを高めることに直結するのです。

また、財政悪化懸念から円売りを加速させ円安に追い打ちをかけることによって、輸入物価の再上昇と国内の消費者物価をさらに押し上げる結果につながる恐れがあり、個人消費の下押し圧力も強まることが考えられます。

物価を抑制し、財政健全化を急がなければならない状況の下で、補助金や金融政策正常化の遅れにより、物価はさらに上昇させる恐れがあり、それと同時に財政破綻のリスクは高まり、国債の格下げによる「悪い金利上昇」が深刻化し、いわゆる円売り、債券売り、株売りの「トリプル安」を招き金融危機に繋がる可能性も否めません。

このように考えると、「財源無き積極財政」による「物価高対策」に対して、その経済効果よりも結果として経済環境を一段と悪化させ、国民の生活を一層厳しい状況に陥れることへの懸念が高まるばかりです。

3年前の2022年9月、英国で起きたいわゆる「トラスショック」が記憶に新しいのですが、その二の前にならないことを祈るばかりです。

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