アプロ君のここに注目;どうみる?「株高不況」

景気

8月13日、日経平均株価が最高値(4万3274円)を更新したことを皮切りに、連日最高値を更新してきたのですが、10月10日の株式市場でついに4万8千円台を付けました。昨今の株価高騰について、実体を伴っていないという見方が増えており、市場では過熱感が強まっています。
今回は、今何故、株高なのか、その要因と見通しについてまとめてみます。

・今何故、株高?

周知のように8月以降、東京証券取引所の日経平均株価が連日のように高騰し、年初来最高値を更新しているのですが、10月に入っても上昇傾向は続き、ついに先日の10月9日、日経平均株価は
4万8千円台を付けました。直近の約3か月の間で6千円強の値上がりとなります。

要因としては、トランプ関税の不透明感が後退し、投資家心理を前向きにしている点がまず考えられます。日本製品に対する相互関税率は25%から15%に引き下げられ、自動車についてもそれまでの27.5%から15%に引き下げられることになり最悪の事態は免れたこと、また、その直後にEUや韓国といった主要国・地域もおおむね同様の内容で米国と合意に至ったことで、世界経済を取り巻く不透明感は大きく後退し、それによって日本企業の業績見通しが好転したことが株価を押し上げたのです。

また、外国為替市場で円安・ドル高が進んでいることも追い風になっているようです。対ドルの円相場は140円台後半から、直近においては150円台が定着しつつあります。円安進行が採算改善につながるとの見方から、輸出関連の大型株を中心に幅広く買われているようです。

10月に入っては、自民党総裁選の影響を受けた政治的な要因も作用しているようです。新総裁の選出により、積極財政と緩和的な金融政策に対する期待が高まり、株式市場を後押したとみられます。

とはいえ、世界的な株価の上昇や日本の株価の急騰の背景には、世界的に資金余剰の状況にあり、株式市場に資金が流入しやすいことや、さらには、資金余剰でも財政悪化懸念から主要国の国債価格の下落リスクが上昇していることから、投資家の株式保有意欲が高まっていることが伺えます。
世界経済の状況が不安定にあるにもかかわらず、株価は世界的に上昇している中で、出遅れ感のあった日本株に海外からの投資資金が流入したことや、財政悪化や物価上昇のもとで国内の投資資金が株式市場に流入した結果が、株価の最高値更新へと導いているのが背景にあると考えられます。

・実体と乖離した株高

株価は世界的にも上昇基調を辿っているのですが、足元の日本株を見ると、あまりに上昇ピッチが速いことも否めないのであって、「景気減速下の株高」に違和感を覚えてなりません。

前回のブログに日本経済の状況についてふれていますが、人口減少や人手不足が深刻化し企業経営が厳しい環境におかれていることや、物価高の下で消費が伸び悩み、景気下振れや実質GDPが停滞していることから、けっして良好とは言えない状況にある日本経済の実体からかけ離れているとしか思えません。あきらかに昨今の株価高騰は実体を伴っていないのです。

史上最高値を更新し続けている株高が「経済の実体から乖離」していることは企業収益や企業経営の実体に即してみても明白です。
本来、株価は個別的にはその企業の収益性や将来性など経営状況を反映するものであって、経営が悪化すれば株価は下落し、成長すれば株価も上昇するのが一般的です。ところが、株価を反映する企業の動向を見ると今の株高には到底結びつかない状況にあると言えます。

例えば、2025年上半期(1~6月)の全国企業倒産は5000件弱と、4年連続で前年同期を上回っており、資本金1億円以上の72万社の業績アンケート調査(東京商工リサーチ)によると、増収企業は48.4%、増益企業が44.6%と半分以上の企業が増収増益に届いていないのです。

明らかに、上場企業の中でも二極化が進んでおり、好景気の会社は半数以下で、景気の悪い会社が半数以上にも至っているのです。このように株価の最高値更新とはかけ離れた状況にあるのが実体と言えるのではないでしょうか。

・想定すべき調整局面

先述したように、実体経済とはかけ離れた株価の高騰と最高値更新の裏腹に、すでに投資家の中では過熱感が漂っており、近いうちに暴落が来るのではと不安を抱く趣も少なくないようです。
昨今の日本経済の実体からして、暴落が起きても不思議ではないと思えてなりません。

かつて、株式市場の歴史が物語っているように実体の伴わない相場の特徴は政治や経済の微妙な動きにもシリアルに反応し、急落と急騰を繰り返すのです。
いずれにせよ、程度の違いはあるとして現在の株価高騰に対する調整局面が必ずやってくるということを想定しておくべきではないでしょうか。
今後の株価に与える影響として注目すべき点を取り上げてみます。

何より、今後も企業の経営環境がより厳しい状況におかれていることです。
帝国データバンクの企業の1年以内の倒産確率を算出した倒産予測値によると、今後倒産リスクが高いとされる「高リスク企業」は全国で約13万社にのぼり、半年前に比べ約1600社増加しているのです。今後もリスクが拡大する可能性が高まっており、倒産件数の増加が懸念されています。
とりわけ注目せざるを得ないのは、企業の二極化が進む中、中小企業の経営はさらに厳しくなることが予測され、国内企業全体の99.7%を占める中小企業は、個人消費を左右し日本経済を支える基盤であるだけに、地方経済の疲弊につながり、日本経済全体に及ぼす影響は決して少なくないでしょう。

また、トランプ関税の影響を軽視できないことも念頭におくべきでしょう。
相互関税が25%から15%に引き下げられたことにより最悪の事態は免れたとは言え、以前に比べ日本企業にとって大きな重荷が課せられことには変わりないのです。
15%の関税は企業にとって大きな負担となるのは必至であり、直接的な影響を受けない企業でも米国企業と取引する日本企業からの間接的な影響を受けることで、悪影響が日本経済全体へ広がってくことが見込まれます。

また、不確定要素はあるものの、関税対策で米国生産への移転傾向が出てくることにより、必然的に国内生産が減少する結果を招き、国内産業への悪影響が考えられることなど、短期的・中長期的影響について決して軽視することはできないでしょう。

株式市場の急落は決して偶然の産物ではないのです。実体を伴わない株価の高騰はバブルのごとく消え去ることは自然の摂理でもあり、「山高ければ谷深し」ということも、また自然の摂理なのであって、このことはかつて幾度と経験してきた人間社会の摂理でもあるのです。

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