最近、職者のなかでスタグフレーションという言葉を口にする人が多くなっているようです。
新型コロナ禍以降の昨今の物価高や景気動向、消費の低迷や企業倒産が急増している今日の経済状況を懸念するエコノミストからスタグフレーションに対する警戒感が強まっているのです。
そこで、今回はこのスタグフレーションについて、その定義と影響、そして今日の経済状況をどう見るべきか、私見をまとめてみます。
・スタグフレーションの定義
昨今の物価高を「悪いインフレ」と称することが多々見受けられるのですが、そもそもインフレとはインフレーションの略語で、物価が継続的に上昇する状態のことをいいます。一方で、デフレはデフレーションの略語で物価が継続的に下落する状態を指す言葉です。
これらに対して、スタグフレーションはスタグネーション(停滞)とインフレーション(物価上昇)を組み合わせた言葉で、景気が後退している状況下で物価上昇が同時進行する現象を表した言葉です。
通常ならば、景気が後退すると、賃金も下がり消費者の購買意欲が下がってしまうため、物価も下落します。しかし、スタグフレーションでは、景気が低迷または後退しているにもかかわらず、モノやサービスなどの値段が高くなるインフレ状態になるため、消費者の生活は圧迫されて苦しい状態に陥ります。
スタグフレーションは、不況と物価上昇という二重の苦しみをもたらすため、経済政策の選択が困難となり、社会全体の経済状況に深刻な影響を与える可能性があるのです。
・スタグフレーションの原因と影響
スタグフレーションは、さまざまな要因が複雑に絡みあって発生すると言われています。
第一にあげられるのは、いわゆる「供給ショック」です。例えば、エネルギー危機や自然災害、戦争などにより供給が突然途絶えたり、減少したりして物価が急騰するのです。
また、自国の通貨安が急激に進むことにより、燃料や原材料などの輸入価格が上昇し物価高を招くことになる一方で、生産コストが上昇するため、企業の利益は低下し経済成長も鈍化するのです。
スタグフレーションは、中央銀行や政府による政策の失敗が原因になることもあります。
景気低迷中の過渡な財政支出や金融政策が自国の通貨安を引き起こし、それが物価上昇を招き、スタグフレーションにつながるのです。
スタグフレーションが発生すると経済全体に深刻な影響を与えます。
なにより、多くの産業や業界にコスト増加や需要低迷をもたらすことが考えられます。
製造業や運輸業などは、石油などの燃料価格が高騰すると、製造コストや輸送費が増え、コスト増を製品価格に転嫁しきれない場合は収益の減少につながります。また、小売業や卸売業なども、物価上昇により仕入れ価格が高騰する一方で、景気の停滞により消費者の節約志向が強まるため、売り上げが低迷するのです。
スタグフレーションは、家計への負担を増加させることにも影響します。物価が上昇する一方で、賃金(実質賃金)は上がらないため、実質的な生活水準は低下します。特に、食料品やエネルギーといった生活必需品の価格高騰により、家計のやりくりが厳しくなり生活苦が増すことになります。
また、企業においては業績悪化を招き、雇用環境にも影響を及ぼします。倒産に至る企業も増え、収益が減少した企業は人員削減や新規採用を控えるようになり、その結果、失業率が上昇し、さらに消費が冷え込むといった悪循環を引き起こすこともあります。
スタグフレーションは株式市場や為替市場などにも多大な影響を及ぼします。
物価高騰によるコスト増が企業の収益を圧迫し、業績悪化が懸念されることで株価が下落する可能性が高まります。また、インフレ抑制のために長期金利が上昇し、債券価格の下落につながることも考えられます。さらに、経済の不確実性が高まる中で、投資家は安定した通貨を求めて資金を移動させるため、為替レートの急激な変動が起こるなど為替市場に不安定要素をもたらします。
・スタグフレーションの現実性
先述したように、スタグフレーションは経済全体に深刻な影響を及ぼすのですが、実は過去に何度も発生しており、そのたびに世界経済や日本経済に多大な影響を与えました。
その代表的な事例は、1970年代に発生した「オイルショック」の時です。まさに、典型的な「供給ショック」によって引き起こされたスタグフレーションでしたが、「オイルショック」による原油価格高騰により物価が急上昇し、企業の生産コストが増加したため、経済成長が鈍化し失業率も増加する事態となったのです。日本では1974年に消費者物価上昇率が25%に迫る勢いの上昇となりました。
さて、このような過去の経験からすると、現在の日本の経済状況はスタグフレーションの事態に酷似していると言っても過言ではないのです。
ロシア、ウクライナ危機による原油や小麦などの供給不足や、急激な円安の進行で食料品などの生活必需品の価格上昇が進んでおり、他方では賃金(実質賃金)は上がらないため、消費者の買い控えもあってさらに物価があがるという状況があらわれています。
値上げラッシュがますます勢いを増す中、物価上昇は収まる気配が無い一方で、個人消費は低迷し、物価高倒産をはじめ企業の倒産も増え続けており、全般的な景気も低迷している昨今の様相は、まさに先述したようなスタグフレーションの事態に酷似しているのです。
このような現況を目前にして、「スタグフレーションの危機」と言い切る職者も出てきており、遠くない将来における株式の暴落説を唱えるエコノミストも少なくないようです。
日銀や政府によるデフレ脱却宣言が未だされていない中で、今の状況を「悪いインフレ」と懸念する声も高まりつつあるのですが、日本経済は今、重大な分岐点に差し掛かっていることは間違いないでしょう。
いずれにせよ、一歩踏み間違えば確実にスタグフレーションに陥る危険性を伴っているだけに、日銀や政府のかじ取りが重大なキーポイントになっていると言えるでしょう。

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