アプロ君のここに注目;深刻化する人手不足、今何故?

企業動向
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人手不足による企業倒産がますます増加しつつあります。とりわけ、中小企業や飲食業などの一部業種においては深刻さが増しているようです。今回は今、何故人手不足なのか、その実態と背景について探ってみたいと思います。

・深刻化しつつある人手不足による倒産

2024年度上半期(4月~9月)の人手不足倒産は163件に達したようです。年度として過去最多を大幅に更新した2023年度をさらに上回る記録的なペースで急増しているのです。ちなみに、2023年度は年間で313件、前年度に比べ2.1倍と大幅に増加したのですが、それを上回る可能性が大きくなりました。

人手不足はコロナ禍以降さらに深刻な社会問題として表面化しており。企業経営に深刻な打撃を与えているのです。
業種別でみると建設業は55件、物流業は19件で全体の45.4%を占めており、飲食業が9件と前年(2件)に比べ急増しています。また、全業種を通じて従業員数10名未満の小規模事業者が多くを占めているようです。

上述したように、いわゆる「2024年問題」の対象業種である建設・物流業において人手不足倒産が顕著にあらわれており、その背景として両業種とも人手不足を感じている企業の割合が約7割に達していて、全体の51.5%を大幅に上回っているのですが、未だ改善の兆しが見られていないのが現実なのです。

また、正社員、非正社員の過不足状況をみると、2024年7月時点における全業種の従業員について正社員が不足と感じている企業の割合は51.0%と5割を上回っており、非正社員では28.8%と約3割が不足しているのです。
なかでも、やはり「2024年問題」に直面している「建設」は正社員が69.5%と、7割近い水準で人手不足に陥ってしているのです。非正社員の人手不足をみると、「飲食店」が67.5%と業種別のトップで引き続き高水準で推移しています。

・人手不足の原因・背景

いずれにせよ、人手不足倒産が記録的なペースで急増しており、人手不足に陥る企業の割合は年々増加しているのですが、では一体何故、今人手不足なのか、いくつかの問題点をまとめてみます。

企業における人手不足とは、業務を行う上で必要な人材が集まらず、業務に支障が出ているような状態を指しますが、これは賃上げ気運が高まるなか市場の流動化が進んでいることや、人材のミスマッチなどの表面的な原因によることだけではなく、少子高齢化などの社会構造的な変化が背景として横たわっているものと考えられます。以下それらの注目すべき点をまとめてみましょう。

まず第一に、社会全体として人手不足を考える場合、なにより少子高齢化の問題が背景としてあると言えるでしょう。
日本は世界的に見ても、急速に少子高齢化が進行している国の一つですが、生産年齢人口は(15~64歳)1995年をピークに減少に転じており、総人口も2008年をピークに減少しています。
このような流れのなかで、ある調査によると、2030年には7073万人の労働需要に対し、見込める労働供給は6429万人で、約640万人もの人手不足になると予測されています。
現時点での社会全体の人手不足は、このような少子高齢化と労働人口の減少が背景として横たわっているのであって、これは一過性の人手不足というよりか、慢性的人手不足を引き起こす要因として作用することが予測されるでしょう。

第二に、就労・産業の構造変化による人材のミスマッチを生んでいることも人手不足の原因として考えられます。
厚生労働省が発表した職業別の有効求人倍率(2023年4月)によると、全体の有効求人倍率は1.32倍には対し、土木の職業は5.60倍、介護関係は3.38、サービス関係が2.82倍となっており、他方で一般事務は0.35、会計事務は0.67倍と、事務職に比べ、土木・介護・サービスなどの業種は人手不足が著しいことがわかります。
求人を出しても採用出来ないと困る企業がある一方で、仕事を探しているのに見つからないと悩む求職者がいて、まさに企業と求職者の間で求める能力や資格、労働条件などのミスマッチに起因する「構造的失業」が生じ、労働力不足と「構造的失業」のダブルパンチが、慢性的な人手不足を引き起こしているのです。
人手不足はどの企業にも共通の課題ではあるのですが、医療・福祉、建設業、運輸業などの業種が特に人手不足感の強い業種になっているのは、こうした人手・人材のミスマッチによることが多くみられます。

第三に、さらに就業者の高齢化が人手不足に追い打ちをかけていることです。
総務省の「労働力調査」によると、就業者数のなかで一般的に「定年」の区切りとなる60歳以上の割合は21.8%(2023年)となり統計開始以降で過去最高を記録しました。その一方で、若手層にあたる20~34歳の割合は23.2%となり、その割合は年々低下し、近い段階で60歳以上の割合を下回る可能性が高いと言われています。
「2024年問題」に直面する建設・物流業に代表される、高齢にともない現場の就労が難しくなりやすい業種で人手不足が顕著にあらわれているのは、このような就労者の高齢化が原因として作用しているのです。

・労働市場の「二極化」と「流動化」

今日の人手不足を考えるうえで見逃せないのは、労働人口が減少しているなかで、「労働市場の二極化」が生じていることです。
厚生労働省の統計によると、現在の労働市場はIT専門職などハイスキル職種の人手不足が深刻化していると同時に、介護やサービス、輸送や建設などいわゆる「エッセンシャルワーカー」と言われるような現場の仕事に従事する職種で人手不足が深刻化しているのです。このように、「ハイスキルワーカー」と「エッセンシャルワーカー」が不足し、事務職などの中間的な業種で人余りが生じている、いわば「労働市場の二極化」が全体として人手不足が現れていると言えます。

かつて、若年労働者が敬遠する「きつい」「汚い」「危険」な労働を、頭文字をとって「3K」と呼んだのですが、 一般的には建設・土木、ゴミ処理などの肉体労働や、看護師、介護士など勤務・労働条件の厳しい職業を指すのですが、まさに今、厳しい人手不足に陥っている業種と合致していると言えるでしょう。

そこへきてさらに、いわゆる「働き方改革」や賃上げ気運の高まりのなかで、より労働条件や賃金の高い業種への転職が活発化し、いわゆる「労働市場の流動化」がサービスや建設・物流など人手不足に陥っている業種にさらなる人手不足を後押ししているのです。

ちなみに、2023年時点の転職希望者は1000万人を超えて過去最多を記録するなど転職市場は活況を呈しているようです。「労働市場の流動化」が進めば、より魅力のある企業への労働力移動が活発化し、「労働市場の二極化」がより鮮明になることが予測されます。

このように、労働市場の「二極化」や「流動化」が進む中、業界を問わず人材の流出を防ぎ人手を確保するうえで、自社でしか得られないスキルや経験、給与水準などの差別化が欠かせないでしょう。
また、就業者の高齢化が一層進むことが予想されるなかで、建設業や物流業に代表されるように、高齢に伴い現場の就労が難しくなりやすい業種では若い就業者の確保が急務と言えるでしょう。

いずれにせよ、企業にとって最も重要な経営資源といえる人材・人手の確保と定着に向け、企業の人事戦略は一層重要性が増しているのではないでしょうか。
また、先にみたように今日の人手不足が社会構造的な変化や少子高齢化の影響が背景として横たわっているだけに、若年層の雇用対策など国や自治体の行政による支援も不可欠であることは否めないでしょう。

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