アプロ君のここに注目;急増するインバウンド

インバウンド

先日、山梨県河口湖に日帰りでちょっとした旅をしたのですが、何より驚いたのは外国からの観光客が多いことでした。とある観光地には見る限り、8割がたが外国人の観光客でした。昨今は普段から東京都内でも外国人観光客が急増していることはニュースなどで知られてきたのですが、これほど多いとはと改めて思い知らされましたね。
人口減少や高齢化などで、インバウンド需要への期待が日本でも高まっていることや、とりわけ昨今の歴史的な円安が背景にあることは間違いないでしょう。
そこで、今回はインバウンドの経済効果について考えてみたいと思います。

・急増するインバウンドの実態

近年、日本でもインバウンド(inbound)という言葉をよく耳にしますが、このインバウンドという言葉は「外から中へ入ってくる」という意味で、旅行業界では「海外からの観光客」を指す言葉として使われています。ちなみに、日本人が海外に出向くことを「アウトバウンド」といいます。
要するにインバウンドは日本を訪れる外国人観光客のことを意味していて、ビジネスの世界では欠かせない存在となっています。

日本にとってインバウンドは、1964年の東京オリンピック開催を契機に増加してきたようですが、とりわけ、2010年代以降に日本政府がインバウンド観光を推進したことで急速に拡大しました。
国土交通省・観光庁によると、2010年に861万人だったのが2013年には1000万人台に増え、2016年には2400万人を超えたのです。そして、コロナ前の2019年には過去最多の3188万人まで拡大したのです。

2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響を受け、2020年から22年までは大きく落ち込んだのですが、22年末から水際対策が大幅に緩和され、ビザ無し渡航や入国人数の上限撤廃などの措置がとられたこともあって、その後の2023年には再び急速に拡大して、訪日客数は約2506万人で新型コロナ禍前の2019年の8割までに回復したのです。
また、2023年の訪日客の旅行消費額は5兆3065億円で過去最多を記録しました。

2024年以降も訪日外国人旅行者数の増加が期待されていて、1月~5月の外国人旅行者数は1464人と過去最高更新ペースで増加しており、2024年通年でも過去最高の3188万人(2019年)を更新する可能性が高いとされています。
ちなみに、今年4月~6月期の訪日外国人消費額は約2兆1000億円で、四半期としては過去最高を記録しているようです。このペースで行くとインバウンドによる旅行消費額は通年で約7兆円程にまで拡大して、過去最高を記録した2019年の30%増となる見込みと言われています。

・インバウンドの経済効果

近年のこのようなインバウンドの急速な拡大は、日本経済にとって大きな影響を及ぼしています。
インバウンドの経済効果は、直接的には主に訪日観光客が日本国内で行う消費活動によって生み出されているのですが、訪日外国人旅行者の消費活動によって新たに雇用や所得が生まれ、それがまたさらなる消費の拡大を生むといった間接的な効果もあるのです。また、このような直接、間接的な効果によって生み出される投資や設備投資なども誘発効果として考えられます。

コロナ前に過去最多のインバウンド観光客を記録した2019年の統計によると、消費額は3兆9264億円で、観光商品やサービスの開発と観光関連施設の建設など訪日外国人旅行者向けの投資額は2兆1600億円と推計されており、これらによる雇用創出効果も約170万人と推計されています。
2023年度は、上述したように旅行消費額は5兆円を超え、2019年に比べ10.2%増だったので、当然これに付随して投資や雇用にも一層の波及効果があったことは間違いないでしょう。
インバウンドの増加は観光業の発展だけでなく地域の活性化や、小売業や商品開発の促進を伴い、これビジネス環境の国際化など、様々な経済効果が考えられます。

インバウンドの経済効果について、直接的な効果として消費活動と関連してもう少し立ち入って取り上げてみましょう。
官公庁のデータによると、消費の用途を「宿泊費」、「交通費」、「飲食費」、「買い物」、「娯楽・サービス費」の5つに分類しているのですが、2017年のデータによれば、全体で4兆4161億円のうち、「買い物」が1兆が6398億円、「宿泊費」が1兆2451億円、「飲食費」が8856億円、「交通費」が4870億円、「娯楽・サービス費」が1439億円となっていて、買い物の消費額が一番多いことがわかります。一時、中国人の「爆買い」という言葉が流行ったのも理解できのではないでしょうか。

また、観光庁による直近の23年10-12月期統計によると、「宿泊費」が1兆8289億円で最も多く、次いで「買い物」が1兆3954億円となっており、飲食や体験などの消費も急増しているようです。当然、宿泊や飲食、娯楽・サービスなどの分野では直接的消費効果の増大だけでなく、これによる投資や雇用などの波及効果も拡大して得られているものと推測されます。

ある調査によると、外国人旅行消費総額が5兆円を超えた2023年でみると、同年の実質GDPを0.7%ポイント押し上げたとされています。
このように、インバウンドの経済効果は年々大きくなっており、日本経済にとって非常に大きな「稼ぐコンテンツ」となってきていると言えます。

・インバウンドの見通しと課題

当然、インバウンド拡大に向けた動きが加速しており、一層のインバウンド拡大が期待されています。
すでに昨年3月には「観光立国推進基本計画」が閣議決定され、2025年度までの新たな計画が取りまとめられています。
「持続可能な観光」、「消費額拡大」、「地方誘客促進」をキーワードにして、2025年までに持続可能な観光地域づくりに取り組む地域を100地域設置することなどの具体的な目標が掲げられています。
来年には大阪で「関西万博」が予定されており、これを追い風としてインバウンドをさらに拡大させ、日本経済の底上げの重要な役割を果たすことが期待されているようです。

ある研究所の見通しによると、今年には2019年の過去最高水準(3,188万人)を上回り、2026年には4,000万人、そして2030年には5,000万人に到達すると予想しているようです。

ただ、「オーバーツーリズム」がすでに社会的問題になっているように、インバウンドの一層の拡大には課題も少なくないようです。
オーバーツーリズムとは、観光地や地域に観光客が過剰に集まることで、地域住民の生活や自然環境などに悪影響を及ぼすことです。例えば、渋滞や公共交通機関の混雑や、観光客によるゴミのポイ捨てなどによる景観の悪化、観光客と地域住民とのトラブル、治安の悪化や犯罪の増加など様々な問題があらわれています。これら、オーバーツーリズムと言われている問題を解消させることが重要な社会問題として提起されているのです。

その他、交通機関における多言語の対応や日本のマナーの共有、日本の文化や伝統を守り地域の風紀を保つための工夫や対策が不可欠になるでしょう。インバウンドを拡大させ、より多くの訪日外国人観光客呼び込もうとする上で、このような環境整備を促進させることは、インバウンドの経済効果を得るためにも必須な課題と言えるでしょう。

それにしても近年の訪日外国人観光客の急増は、昨今の円安が大きく作用していることは間違いないのですが、考えてみると、一方では国内の住民は円安による物価高に苦痛を強いられている反面、外国人観光客は円安を糧にした爆買いや優雅な観光を楽しむ姿を前にして、少し違和感を感じるのも率直な気持ちではないでしょうか。

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