このところ、金の価格が高騰しているというニュースをよく耳にすることが多いのですが、日本では株価が史上最高値を更新している最中、実はそれ以上に金や銀などの貴金属の高騰が注目を引いているようです。そこで今回は、金の高騰とその背景についてまとめてみましょう。
・高騰する金価格の推移
最近、度々ニュースに取り上げられている金や銀などの高騰が世間の注目を引いていますが、とりわけ金(ゴールド)の価格高騰には目を見張るものがあるようです。
米国ニューヨーク商品取引所では新年を迎え、先物価格が史上初めて1オンス=4600ドル台に達し、昨年年初の2600ドル台から70%以上も値上がりしました。
日本でも、地金商最大手の田中貴金属工場によると、13日の店頭小売価格は1グラムあたり2万5932円と過去最高値をつけました。
少し遡って見ると、金の価格がいかに急上昇しているかはっきりと捉えることができます。
例えば、2024年9月の時点で1グラムあたり1万3000円台だったのが、25年9月には1万9000円を超え、わずか1年で約6000円上昇しました。そして、昨年の12月には2万5015円の最高値を記録し、わずか3~4か月程で6000円の上昇となりました。
2020年初頭に1グラムあたり約5500円~6800円で推移していましたので、それに比べてなんと4倍以上の値上がりとなります。
このようなうなぎ登りの様相を見せている金の高騰につられるかのように、プラチナや銀も最高値を更新し急上昇しています。ちなみに、年初の価格と比べプラチナは2.7倍、銀は2.6倍に跳ね上がっています。
いわゆる「ニクソン・ショック」と言われたIMF体制の崩壊した当時、1973年前半の日本の金価格は1グラムあたり700円前後で推移していたことを思い起こすと、本当に信じ難いとしか言いようがないですね。
・金価格高騰の背景
「有事の資産」とされてきた金(ゴールド)の価格が急騰しているのは法定通貨の価値が薄まっているのと表裏一体をなしていると言えます。
元来、金は人類社会が商品経済への移行とともに、商品交換を仲介する貨幣の体現物としての絶対的な存在として機能してきたのですが、商品経済の発展とともに金の代替物として紙幣などの各国通貨が流通されるようになり、長らく金本位制度のもとで各国の法定通貨は金との直接な繋がりをもっていました。
ところが、法定通貨と金の関係が大きく変わったのが1971年の「ニクソン・ショック」でした。当時、世界の基軸通貨として機能していた米国ドルと金の兌換を停止したことによって、通貨の価値は金に直接紐づくのではなく、国家の信用に委ねられるようになったのです。
「金本位制」を脱して金との直接的な結びつきを失って以降、通貨の信用は国家そのものへの信用でもあったのですが、逆に捉えれば金をはじめ貴金属の高騰は、法定通貨とその価値を裏付ける国家そのものへの信頼の揺らぎの表れでもあると言えます。
つまり、高止まりし続けるインフレ、公的債務の膨張、世界の分断加速などを受けて、ドルや円などの法定通貨に対する信頼感が急速に低下していることの現れなのです。そしてその受け皿として、発行体がなく供給制約のある、しかも最も強い安全資産としての金に世界中の投資家が逃避を始めているのです。
これは、不安定な政府の政策が通貨の購買力を侵食する可能性があり、政治的不安定性により主要通貨が金や銀などの安全資産よりも財政的・政策的ショックにさらされやすいという懸念を反映していることでもあるのです。
昨今では世界的な流行となった新型コロナウイルスや、ロシアとウクライナとの戦争の長期化、そしてトランプ関税による世界経済の混乱など、経済的に不安定な状態にあるのですが、もともと資産価値が高いと言われる金がここまで高騰したのは、このような世界経済の不安定さが要因の一つと言われています。
株式や紙幣は世界中で流通していますが、これらは発行する企業や国への社会的信用があって初めて価値を持つものです。それに対して、存在そのものに価値のある金は、社会的信用に不安がある時でも「安全資産」として選ばれやすくなっているのです。
ちなみに、米ドルの国際的な価値を総合的に測定する指数である「ドル指数」はトランプ大統領が就任して以来、約9.6%下落しているようです。
日本の円通貨についてみると、金に対して日本円の価値が本格的に下がったのも今世紀に入ってからですが、金融緩和が恒常化し、財政拡張が進んだ時期と重なっているようです。
2010年代、アベノミクスの異次元緩和政策により財政規律が一段と緩み、財政危機への不安が高まる中、昨年発足した高市政権の「積極財政」により、市場では警戒感が渦巻き長期金利の上昇が止まらない状況にあります。つまり、日本国債の信頼が揺らぎ、「日本売り」、「円売り」に拍車をかけ、円の信頼が薄らいでいるということです。
「有事の資産」として金が買われ高騰し続けるのは、このようなドルや円の信認が薄らいでいる証なのです。
・今後の見通し
米国連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き下げる確率が高まっているようですが、利下げは通常、利回りを生み出さない資産に対する投資家の意欲を高めることになります。
近いうちに金利引き下げの予測がはびこっている中、米国では今年末までに金価格が4900ドルから5000ドルに達すると見込む職者が少なくないようで、長期的には6000ドルの可能性もあると予測されています。
皮肉にも、金価格が下落する主な要因は世界経済の安定化と言われていて、景気が回復すると投資資金はリスク資産へと向かい、相対的に金の需要が減少します。つまり、通貨や株式などのリスク資産が人気を集めると、金から資金が流出して金の安全資産としての地位に影響を与える可能性があるのです。
ところが、残念ながら当面としは世界経済の安定化や政治的不安の解消は望めそうもないのが実情だと言えます。
過去の歴史が証明しているように、2000年代に入ってからもリーマンショックや近年の新型コロナの経済的影響、そしてウクライナ情勢など、世界の政治・経済的な不安定要素が金価格を押し上げているのは間違いないでしょう。
先述したように、日本においても昨今の円の為替変動(円安)やインフレ懸念、国家財政危機などがその背景として金価格を押し上げてきたのも否めないのです。
こう見ると、現在、金などの貴金属の価格は歴史的な高値圏にありますが、今後もインフレや金融不安など経済や地政学的不安やリスクが続くなかで、金はこれからも安全資産として注目が集まり、さらなる上昇の可能性が高いと言えるのではないでしょうか。
かつて、マルクスは貨幣論を展開しながら、「貨幣は生まれながらにして金である」と強調したのですが、絶対的価値の体現物であり、安全資産としての金への回帰が勢いを増していくような気がしてなりません。
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