ついにトランプ大統領は2日、予告していた通りに日本を含むすべての国からの輸入品に対して「相互関税」をかけることを公表し、その具体的内容を明らかにしました。「トランプ関税」の発動により、世界経済はもとより、日本経済にも甚大な影響を与えることは避けられないでしょう。
そこで今回は、トランプ政権の関税政策が与える経済的影響その行方について考えてみます。
・「トランプ関税」の注目点
トランプ大統領は、年1.2兆ドル(約179兆円)を超える米国の貿易赤字や国内産業の空洞化を「国家の非常事態」と認定し、大統領権限で関税を発動しました。
トランプ大統領はすでに、アメリカに輸入される自動車および自動車部品に対する、25%の関税をすべての貿易国に対して一律に課すると宣言しているのですが、これに加えて公表した新たな関税は、すべての国にかける10%の「基本税率」と「上乗せ税率」に分かれるのですが、上乗せ分が相手国と同水準まで関税率を引き上げる趣旨を持つ相互関税の中核要素になるようです。
上乗せ税率がかかるのは、米政権が「最悪の違反者」と認定したおよそ60か国・地域で、関税率だけでなく、消費税や為替政策、各種規制などの非関税障壁を加味し、日本もこれに認定されたのです。
基本税率は日本時間の5日(午後1時)、上乗せ税率は同9日(午後1時)に発動されます。
トランプ大統領は2日の演説で「諸外国は米国製品に多額の関税をかけ、法外な非関税障壁を設けて米国の産業を破壊しようとしてきた」とし、日本についても米国の車メーカーの日本市場への参入規制を非関税障壁として挙げながら、非関税障壁などを含めると、日本は実質的に米国に46%の関税をかけているに等しいと認定し、46%のおよそ半分にあたる24%の相互関税を課すことを明らかにしました。
その他、欧州連合(EU)の税率は20%、中国は34%、インドは26%とし、中国については、既にかけた20%の追加関税に相互関税の34%を上乗せするとしています。そして、既に25%の追加関税を発動しているカナダ、メキシコに対しては相互関税の対象から当面外すとしました。
最近のトランプ大統領や側近の発言などからして、「相互関税」の対象となるのは一部の主要国に限られることや、国・地域ごとに単一の関税率を設定するとしつつも、関税率は低く抑えられるものと観測されてはいたものの、実際に発令された関税措置はかなり厳しいもので、多くの国々、とくに日本のようなアメリカにとっての貿易赤字国にとっては、大きなダメージになるのは間違いないでしょう。
・「トランプ減税」の影響
何より、日本の自動車産業にとって大きな打撃になるのは想像に難くないでしょう。
米国の新車販売台数は約1600万台で、このうち日本メーカーは約3割程のシェア(市場占有率)を持っているのですが、特に近年、円安の影響や高価な大型車が売れ筋の米国を稼ぎ頭に位置付けて注力してきただけに、追加関税により、その景色は一変する可能性が出てきたのです。
例えば、2024年1~10月に米国で販売された車両のうち、トヨタ自動車では米国生産が47%、残りの5割強が日本やカナダ、メキシコからの輸出だったのですが、追加関税でトヨタの営業利益は約3割程度も減ると予測されています。
また、自動車産業だけでなく、自動車産業は裾野が広く、関税の影響は日本経済全体に悪影響が及ぶことになるでしょう。関税の影響で国内生産が減少し、日本の実質国内総生産(GDP)が最大で0.52%~0.8%押し下げられるとの試算も出ています。このような状況を反映して「国内車産業13兆円打撃」や「日本経済後退の危機」など衝撃が広がっています。
トランプ政権の関税政策に対し、EUや中国など相手国は一斉に非難するとともに、報復関税で対抗することを強く打ち出しており、世界的な貿易戦争に拡大する可能性が高くなっていますが、これにより貿易が縮小し、世界経済全体が「供給ショック」による景気後退に陥ることも懸念されています。
また、今回の関税措置で注目されるのは、ベトナムやカンボジアなどのASEAN諸国に最も高い関税が課せられているのですが、現在、ASEAN諸国の全輸出に占める対米輸出は、約2割まで拡大しており、世界でもっとも経済成長しているとも言えるASEAN諸国が不況になれば、それは全世界に及ぶことになるのは間違いないでしょう。
直近の日本の株価が急落し続けているように、すでに株式市場は、全世界で低迷しているのですが、トランプ関税の拡大による世界経済のリセッションに対する悲観論が蔓延すれば、これまで株価を引き上げてきたコロナ禍による金融バブルが一気に弾ける可能性も否定できないでしょう。
物価高の下で不況となる「スタグフレーション」への懸念も垣間見えるのは日本だけではないと言えるのではないでしょうか。
・「トランプ減税ショック」の行方
トランプ政権の保護主義的な関税の導入は、その反動としてアメリカ国内の主要な自動車産業の一時停止や、価格の上昇を招く可能性が高いと言われており、関税導入に伴う「供給ショック」により、米国経済のリセッションのリスクが高まることも懸念されています。また、高水準の関税は米国国内の物価上昇圧力になり、変動の大きい食料やエネルギーを除いたコア指数が2025年末には3.5%増まで上がるとの予測も報じられています。
トランプ政権は、この措置がアメリカの自動車産業に「驚異的な成長」をもたらし、米国国内での雇用と投資を促進するとしていますが、米国経済に悪影響を及ぼすとの観測が強く、景気後退に陥る確率が高まっていると分析する職者も少なくないのです。
トランプ大統領は「短期的な混乱はあるが、関税はアメリカを豊かにする」と自負しているのですが、同盟国との関係悪化や、報復関税により米国企業も大打撃を受け、返り血をみることになるのは避けられないのです。
日本や世界経済に甚大な影響を及ぼすだけでなく、なにより米国経済自身が大きな打撃を受けることになり、国内企業からも反発が出ているだけに、今回の関税政策は長続きしないのではという観測も出ているようです。足元のアメリカ景気の悪化が顕在化した時に、米国内部からの反対論が上がれば政策転換が図られる可能性も否定出来ません。
いずれにせよ、「トランプ減税ショック」が今後どういう形で顕在化していくのか、また、トランプ政権の政策転換はあるのか、固唾を呑んで注目していく思いです。

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