アプロ君のここに注目;中東情勢、懸念される経済への影響

円相場

2月28日の米国・イスラエルによるイランへの攻撃とイランによる報復攻撃が続き中東情勢の緊張が高まっている中、原油供給への不安や原油高など経済への影響が広がっています。日本にもすでにその影響が出始めており、今後の見通しが不安視されています。
今回は再び緊張高まる中東情勢が日本経済に与える影響についてまとめてみましょう。

・「ホルムズ海峡危機」とオイルショックの再来

イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く中、中東情勢の悪化に伴う供給混乱が長期化がするとの警戒感からニューヨーク原油市場で原油先物価格が一時節目の1ドル=100ドルの大台を突破(3月15日現在)しました。また、この状態が続けば、原油やLNG(液化天然ガス)の貯蔵にも限界が生じることから、生産国が自ら生産を停止する動きが広がる懸念もされ始めています。

ホルムズ海峡は世界の原油供給量の約20%が通過する戦略的チョークポイントといわれており、ここでの航行リスクの急進は単なる心理的な供給不安にとどまらず、輸送コストの物理的かつ劇的な跳ね上がりを引き起こす構造を持っています。

ひとつは、海峡通行の急減と保険引き受け停止、それに伴う迂回航路への移行によるコスト増が考えられます。保険引き受けが完全に停止されれば、商船は事実上の航行不能に陥いり、これにより、海運各社はアフリカ大陸南端の喜望峰などを経由する迂回ルートへの変更を余儀なくされるのです。ペルシャ湾からアジアやや欧州に向かう航路を喜望峰経由に迂回させた場合、航海日数は片道で10日から15日ほど延長され、燃料消費量や労務費が膨張します。

また、市場が織り込む「供給不安プレミアム」の存在です。国際指標となる北海ブレント原油先物価格は、現在の実体経済に基づく需給バランスから乖離し、将来の供給途絶リスクを先取りする形で上昇圧力を受けています。
米国金融大手などの試算によると、ホルムズ海峡における物理的なタンカー航行が1か月間完全に遮断される最悪のシナリオでは、原油価格1バレル当たりに20ドル以上のプレミアムが上乗せされると予測されています。仮に実際の供給遮断が起きなくても、軍事的な緊張状態が継続するだけで、常に1バレル当たり5ドルから10ドルの不確実性プレミアムが価格に内包され続けるといわれています。ホルムズ海峡は液化天然ガスの約20%が通過する要衝でもあり、原油のみならずエネルギー全般の調達コストを押し上げるのです。

・懸念される原油高の影響

日本は原油をほぼ100%輸入に依存しており、そのうちの90%以上を中東に依存しているのですが、そのほとんどがホルムズ海峡を経て日本に入ってきます。そのため、原油価格の急騰は、日本のエネルギー大手企業の経営や、家計を直撃する小売価格に深刻な影響を及ぼし、日本経済全体に大きなダメージを与えかねません。

仮にWTI(米国)原油先物価格が1バレル=100ドルで推移する場合、日本国内のガソリン価格は、政府の対策が講じられない際には1か月程度で1リットル=235円まで上昇し、実質GDPは1年間で0.30%低下し、物価は1年間で0.52%上昇するとされています。

一方、原油価格の上昇と並行して、為替市場ではドル高円安が進んでいます。米国は原油と石油製品の純輸出国であり、原油価格上昇のメリットを相対的に受けやすいうえに、ドル建てで取引される原油の価格が上昇すれば、ドルの需要が高まるとの観測からドルも買われやすくなっているのです。

こうした中、日本は原油価格の上昇と円安の二重苦に直面しています。ドル高・円安がさらに進めば、円建ての輸入原油の価格はその分上昇し、国内の一層の物価高を助長しかねないのです。

原油高と円安の「ダブルショック」は日本の消費者物価の押し上げに繋がるのは言うまでもないのですが、これは大きく4つの波及経路を通して起こることが考えられます。

第一波は、輸入物価の上昇に直結するガソリンや灯油など「エネルギー」関連商品への即時の反映です。ここでの価格転嫁のタイムラグは1か月前後と短く消費者物価指数(CPI)を直接的に押し上げることになります。

第二波は、「電力・ガス」料金への転嫁です。これは輸入価格の変動から約3か月から5か月の遅れを伴ってCPIに反映されます。というのは原油価格の上昇によるコスト増が家庭や企業の電力料金へ反映されるまでには、「燃料費調整制度」による数か月の時差が生じる構造となっているからです。具体的には、3か月間の平均燃料価格の実績が、その2か月後の電気料金に上乗せされる仕組みです。つまり、足元で発生した中東情勢緊迫化に伴うエネルギー価格の急騰は、すぐには電気料金を引き上げず、およそ5~6か月近いタイムラグを経てから家計に重くのしかかるのです。

第三波は、燃料コストの増大を受けた陸運や海運業界などによる「物流」運賃の引き上げです。
物流コストの転嫁は荷主企業との価格交渉を要するため、実際のサービス価格上昇として統計に表れるまでは6か月以上の期間を要すると見られています。

最後の第四波は、輸送費や包装資材費の上昇が食品や日用品などの消費財全般に転嫁される最終段階です。

このような波及経路を経て消費者物価を押し上げるのですが、かりに原油価格が10%上昇すれば、直接、間接の波及を含めて最終的には消費者物価指数(CPI)を0.3%から0.5%近く押し上げる強烈なインフレ圧力となります。しかも、このインフレ圧力が一度に出現するのではなく最初の1~3ヶ月でガソリン価格が上がり、5~6ヶ月後に電気料金がピークを迎え、1年後に加工食品の値上げが相次ぐという時間差の構造を持って物価上昇に表れるのです。

このように考えると、原油高と円安の「ダブルショック」時に効く最大の変数は。原油価格の上昇幅、為替レートの動向、そして燃料費調整のタイムラグの3点に集約されるでしょう。
たとえば、とある試算によると、世界の原油価格の基準とされている北海ブレント原油が1バレル当たり80ドルから100ドルへと25%上昇し、同時に為替レートが1ドル当たり150円から160円へと約7%の円安に振れた場合を想定すると、円建ての原油輸入価格は約33%の劇的な上昇となるようです。

こうして、原油高と円安の相乗効果は、時差を伴いながら日本経済のあらゆる供給網に浸透して、物価上昇の波を長期化させる結果を招くことになるのです。

・懸念高まる 原油高、円安、景気減速の「3重苦」

かつて、日本は中東情勢の変化によって度々オイルショックの影響を受けており、とりわけ1990年の「湾岸戦争」時の時も原油価格の上昇による国内経済の大きなダメージを受けましたが、原油価格は上昇したものの、輸入価格は円高によって一部が吸収され、いわば「強い円」が湾岸戦争の悪影響の防波堤になりました。ところが、現在の日本は円安局面にあって輸入エネルギー価格はドル建てで取引されるため、原油価格の上昇に円安が重なり国内の輸入コストへの影響は大きくなる可能性が高いといえます。

日本政府はこうした状況を受け、石油備蓄の1か月半の消費量に相当する分を放出する一方で、さらにはレギュラーガソリンの全国平均価格を170円ほどに抑えるため、元売り企業への補助金を支給する施策を打ち出しています。一方、足元でドル円レートは1ドル159円台を推移しており、円安がさらに進めば、政府はレートチェックや為替介入に踏み込む可能性も出てくることが考えられます。

しかし、政府による激変緩和措置として備蓄原油の放出や元売り会社に対する補助金措置が再開もしくは延長されれば、CPIの表面的な数値はある程度抑制されるかもしれませんが、中東情勢の緊張が長引くにつれ、それは国民負担の時期を先送りしているに過ぎないと言っても過言ではないでしょう。

さらに、2月分の米国雇用統計の悪化を受けて、国内の物価高と米国向け輸出減速がもたらす国内経済への悪影響も意識されてきており、日本は原油高、円安、景気減速の三重苦に直面し始めています。中東情勢の緊張が長引くにつれ、その度合いは一層深刻なものになりかねません。

補助金再開を受け店頭のガソリン価格は一旦下がったようですが、そもそもの原因となっているイラン情勢に改善は見えず、石油の供給は依然として不安定な状況が続いています。

米国とイスラエルによる狂気じみたイランへの内政干渉と国際法上、明らかな違反といえるイランへの攻撃が根源である以上、最悪の事態を避けるべく国際社会の協力のもと一刻も早いイランへの戦争行為を停止させることが優先されるべきではないでしょうか。

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