参議院選挙がいよいよ20日の投票日に向けて今日公示されます。マスコミでも報道されているように、選挙の主な争点が物価高対策におかれているようで、政府与党の提示する現金給付か、野党の消費税減税か、すでに活発な選挙戦が始まっているようです。そこで、今回は留まる気配のない物価高の中での参議院選挙で争点になっている物価高対策についての思いを綴ってみます。
・選挙対策としての給付案と減税案
周知のように、政府自民党が今回の「目玉商品」として取り上げているのが現金給付案です。それによると、国民1人あたり一律で2万円の給付と18未満の子供1人につき追加で2万円、大人でも住民税非課税世帯には2万円が加算されて給付するというものです。例えば、両親と子供2人の家庭では両親それぞれに2万円ずつ、子供は1人につき4万円で計12万円を支給するというものです。
政府は「本当に支援が必要な人に届くようにする」、「出来るだけスピード感のある対応」を強調しています。
しかし、この政府案に対して様々な反応があるようで、2万円では生活の足しにならないとか、物価の上昇分に比して一時しのぎに過ぎないなどの不満が少なくないようです。また、給付金が参院選直前になって発表された点で「ばらまき」批判が噴出しているようです。
一方で、野党の多くが給付よりも減税を提案しています。各党の主張に違いはあるようですが、主に飲食物に対する消費税を減税、もしくは1年間ゼロにする、ゆくゆくは消費税の廃止まで見込む案などを選挙公約として打ち出しています。
いずれにせよ、これらの公約が選挙での物価高対策として主張されているのであって、昨今の物価高で生活苦に追われている国民の「生活を守る」一貫性のある政策として主張されていない点で、疑念を抱かざるを得ません。
言い換えれば、現金給付をするので我が党に投票してください、減税政策を進めるので投票してくださいと、残念ですが選挙目当ての党利党略でしかないように思えてなりません。
・どうする財源問題
政府・自民党が打ち出した給付政策は総額で約3兆1000憶円になると言われています。この財源について、石破首相は赤字国債には依存せず、税収上振れや歳出の不用額、基金の返納額などの税外収入を集めて捻出すると表明しています。
ちなみに、財務省の発表によると、2024年度の一般会計税収は昨年11月の見込み額から約1.8兆円上振れし75.2兆円となり、5年連続過去最高を更新する見通しとなったようです。物価高などで消費税収が膨らみ、賃上げによる所得税収も想定を上回ったようです。物価高と賃上げが続き25年度の税収も上振れると見込み、税収の上振れ分を主な財源とする方針を示しているのです。
ただ、「トランプ関税」交渉の行方が見通せない中、夏場以降の景気失速が現実味を帯びれば思惑通りに税収を確保できるかも危ういのではないでしょうか。
一方で、野党の減税案をみると、食料品の消費税を時限的に廃止する案や完全廃止、または時限的に消費税を5%へ引き下げることが公約として打ち出されているのですが、この場合は一時給付とは違って年々の財源問題が無視できないようです。例えば、食料品に限定した消費税廃止の場合、財政負担は4.5兆円、消費税全体の5%引き下げによる税収減は年間約15兆円見込まれるようです。これらの財源をどう解決するかが問われてくるでしょう。
政府与党の給付政策に対して、「選挙前のバラマキ」との批判が少なくないのですが、野党の消費税減税案においても財源をどう確保するのかが課題となるのは不可避ではないでしょうか。
・望まれる政治の原点への回帰
さて、これらの物価高対策が国民にどのように評価されるかは選挙結果によるところがが大きいと言わざるをえないのですが、選挙対策としての側面が脳裏に横切るのは否めません。
物価高で生活苦に追われている低所得層にとって、給付は即効性が高く生活の下支えに直接的効果があるという点では肯定的に思えるのですが、物価高の対比における給付額の限界や経済効果の持続性は限定的だと見る筋も少なくないようです。
一方で、消費税減税は日常の買い物で恩恵が実感でき、物価高の影響が大きい子育て世代や収入の少ない家庭の生活の支えになるという実感が大きくなるという点では国民の支持を得やすいかもしれません。しかしその反面、財源確保がむつかしくなり財政負担は避けられないでしょう。
また、給付と消費税減税を併用する政策が可能であるなら国民の消費マインドを複合的に刺激し、国民の恩恵も大きくなるのですが、その半面、財政負担は増え増税や国債の追加発行などで次世代へのしわ寄せが重くのしかかることに繋がり、結果として長期的に見て国民の負担増になることが予想されます。
いずれにせよ、国民の命と生活を守るという本来の政治の使命と原点に立ち返り、収まる気配が見えない物価高を如何に収束させ、国民の生活を安定させるのか、与・野党の協働でベストな政策を見出すことが望まれている時だけに「選挙対策としての政策」に終わらせるべきではないと痛感する次第です。

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