衆議院選挙の解散とともに「消費税減税論」が再び持ち上がっています。先の参議院選挙でも争点の一つに取り上げられたのですが、今回は与野党ともに消費税減税を公約に掲げており、時限的なのか、恒久的か、あるいは食料品限定なのか消費税廃止なのかという違いはあるにせよ、選挙後に何らかの形で消費税減税が実行される可能性が高いでしょう。ただ、制度設計を正しく構築しないとメリットだけではなくデメリットも少なくないようです。そこで、今回はこの消費税減税の問題について取り上げてみましょう。
・再び注目を浴びる「消費税減税論」
長引く物価高の最中、選挙あるごとに物価高対策として持ち上がる「消費税減税論」ですが、今回もやはり各党が選挙公約としてまっさきに取り上げているのが消費税減税問題です。
近年、選挙になると物価高対策として減税を云々して消費税の問題を議論されているのですが、消費者からすれば、またかと首をかしげてしまうところも多々あるようです。先の参議院選挙でも熾烈な論争をしながら各党が公約として掲げたことですが、選挙が終わるとこれといった手立ては取られて来なかったのは一体何のか、はなはだ疑問に思えてなりません。正直言って怒りさえ覚えてしまいます。
昨今の物価高により生活がますます苦しくなっている最中、選挙の「票集め」のための議論に終わらすことは、もう絶対に許されないことではないでしょうか。
今回、消費税減税について各党の公約をみると、自民党・維新の与党は「食料品の消費税を2年間に限りゼロにする減税策の検討を加速させる」ことを明示しました。少し曖昧な感じもしなくはないのですが、減税の方向で公約したとみることができるでしょう。
立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」は、恒久的に飲食料品の消費税をゼロにし、そのための財源を明示することも公約すると宣言しています。
その他の野党も、全ての消費税を一律2%にすることや、消費税制度の廃止案などを打ち出しています。いずれにしても、与野党すべての党が消費税減税案を唱えているのです。
これまで慎重な姿勢を見せていた自民党までも消費税減税に賛成したことによって、今回の衆議院選挙後には、早い段階でほぼ消費税減税が確定的に施行されるものと思われます。
・消費税減税の影響
以上のように、与野党の基本政策として消費税減税をうちだしているのですが、物価高の中で生活必需品である飲食料品に限定されるにせよ消費税がゼロになることは、消費者にとって家計の負担軽減になることは間違いないでしょう。
とある家計調査によると、4人家族の場合、1か月の平均食費は約9万5000円弱であり、そのうち食品の消費税は約5300円程で、これを年間にすると6万円以上になるそうです。
長引く不景気や相次ぐ物価高騰によりダメージを受けている家計にとって、たとえ食料品に限定されるにせよ消費税がなくなることは家計負担軽減に直結するメリットがあるでしょう。
ただ、問題は消費税減税の財源をどう確保するかという問題があります。
自民党の「2年限定の減税案」をとってみても、税収減は約10超円近くになると見込まれていて、簡単に生み出せる額ではないはずです。
もし、国債で減収分を補うことになると、財政負担が増し、これによって金利の上昇を招き円売りが加速して一層の円安を促す結果を招きかねません。円安が加速して物価の上昇を後押しすることになれば、消費税はなくなっても輸入コストが上昇して本体の値段が上がってしまう可能性も否めないのです。
そういう意味では、消費税減税の効果を生み出すには、財源の確保が不可欠であって、安易に消費税減税を唱えることは逆効果にもなりえると言えるでしょう。
・慎重を要する「消費税減税論」
とりわけ、注目せざるを得ないのは消費税減税による負の影響です。
家計の負担を軽くし、家庭の食卓を守ることによって相次ぐ物価高騰によりダメージを受けている家計を少しでも助けようとする意図は十分理解できるのですが、もしこの政策がそのままの形で導入された場合、飲食店など外食産業に与えるマイナスの影響は決して少なくないでしょう。
制度設計次第では飲食店などの外食産業の経営を圧迫し、倒産増加を招く可能性があるのです。
食料品の消費税ゼロが果たして「非課税取引」になるのか「免税取引」になるのかは、まだ明らかになってはいませんが、場合によっては中小規模の飲食店に深刻な打撃を与えかねないのです。
「免税取引」の場合は一定の条件を満たせば取引のために行った課税仕入れについては、原則として仕入れに係る消費税額を控除することが出来ますが、「非課税取引」の場合は消費税が課税されないため、非課税取引のために行った課税仕入れについては、仕入れに係る消費税額を控除することが出来なくなり、実質的に飲食店の税負担が増加します。
食料品という性質上、社会政策的観点からすると「非課税取引」になる可能性が高いと言われていますが、もしこうなれば、ただでさえ原材料費や人件費が高騰しているなかですら、個人経営の飲食店の多くは値上げに踏み切れずに苦しんでいるのに、「消費税ゼロ案」が現実のものになれば、これまでぎりぎりで経営していた個人経営の飲食店は閉店に追い込まれることも考えられます。
また、飲食店などの外食産業への影響が大きいと言われている理由の一つが現在の税制そのものにもあります。
というのは、現在では店内飲食(イートイン)は消費税10%に対して、持ち帰り(テイクアウト)は軽減税率で8%になっているのですが、これが店内飲食は消費税10%、テイクアウトは消費税ゼロになれば価格差はますます大きくなり、テイクアウトや外食控えが増えてしまう可能性があり、外食産業へのダメージも決して少なくないのです。
いずれにせよ、選挙での人気取りや票とりのための「消費税ゼロ論議」ではなく、飲食店や外食産業の現実を見据えて、複数税制の見直しなどを含めた税制改革の慎重な議論が欠かせないのではないでしょうか。
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