アプロ君のいちからわかる経済教室;生産年齢人口と労働力人口

人口問題

人口減少が加速する中、人手不足が深刻な問題として懸念されている昨今ですが、経済的には生産年齢人口の減少として表れています。ところが、近年、日本では労働力人口が増加傾向にあるのです。そこで、生産年齢人口と労働力人口とは何か、その違いと今後の推移についてまとめてみます。

・生産年齢人口の定義

生産年齢人口とは就業者と失業者を含む15~64歳の人口層のことで、労働の中心的な担い手として経済に活力を生み出す一方で、社会保障を支える存在でもあります。
これは、生産能力の優劣や労働意欲などは考慮されていない、いわば労働に従事できる年齢別人口を意味する概念です。

年齢別人口には大きく分けて3つの区分があります。0歳から14歳の年齢層は「年少人口」、15歳から64歳までの年齢層を「生産年齢人口」、そして65歳以上の年齢層は「高齢人口」と定義されています。

生産年齢人口は国内における労働力の総体といえる概念であり、その増減率によって社会や経済の情勢が大きく左右されます。たとえば、戦後以降の生産年齢人口は増加傾向にあったのですが、1980年年代後半に日本はバブル経済と呼ばれる時期を迎えることになりました。しかし、生産年齢人口は1995年の8,716万人を頂点に減少し続け、1991年頃のバブル崩壊に伴って経済の長期低迷へと突入し、今なお続いているのです。もちろん、デフレ経済に陥った原因のすべてが生産年齢人口の減少にあるとは言えないのですが、労働力不足や国内需要の減少、それに伴う経済規模の縮小など、国内の社会・経済情勢に大きな影響を及ぼしているのは間違いないでしょう。

・労働力人口の定義

これに対し、労働力人口は労働への意欲や意思、能力をもつ人口層と定義されています。要するに、労働力人口は「就業者」と「完全失業者」の総数であり、15歳以上であれば年齢の上限はないのです。
言い換えれば、就業者と完全失業者の合計とは、実際に働いている者、または働きたいという意思を持ち、仕事があればすぐに就くことのできる者ということになります。

たとえば、生産年齢人口に含まれない65歳以上の人であっても、実際に働いていたり、休職中で働く意思を持っていれば、生産年齢人口には該当しませんが労働力人口に含まれます。そのため、今まで労働力人口に含まれていなかった人々の労働参加が進むと、生産年齢人口が減少しても労働力人口は増加することになります。
実際に、ここ20年間をみると、日本では労働力人口は増加傾向にあり、特に高齢者の増加は顕著に表れています。

・生産年齢人口の減少と労働力人口の増加

さて、そこで生産年齢人口と労働力人口の推移をもう少し立ち入ってみましょう。
国内の総人口は2008年の1億2.808万人をピークに減少し続けており、それに伴って生産年齢人口も減少傾向にあります。先述したように、国内の生産年齢人口は1995年の8,716万人を頂点として減少傾向にあるのが実情です。
総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、2023年時点における国内の生産年齢人口は7,395万人で、1995年のピーク時と比較して約1,320万人の減少となっています。

生産年齢人口の減少が加速する背景にあるのは、人口の減少と高齢化率の進展です。いわゆる、少子高齢化が加速しているのですが、その要因としていくつか考えられますが、なかでも女性の社会進出によって未婚化・晩婚化が加速していることや、経済的な不安から結婚や出産を躊躇する人が増加することによって未婚化・晩婚化を招いていることが大きな影響を与えていると言えます。

このように、生産年齢人口の減少が加速している反面、労働力人口はほぼ横ばいで推移しており、直近の5年間ではむしろ増加傾向にあります。
総務省が発表した労働力調査によると、15歳以上の働く意欲がある労働力人口は2024年に6,957万人で比較可能な1953年以降過去最多だったのです。前年比32万人の増加で、2年連続で最多を更新しました。ちなみに、労働力人口は6,565万人だった2012年以降増加傾向で推移し、2019年以降は6,900万人を上回る水準になっており、24年6月に7,003万人と初めて7千万人を超えたのです。

生産年齢人口が減っているのに、労働力人口が増えているのは専業主婦などの女性や高齢者の労働参加が大きく影響していると考えられます。これは女性や高齢者の社会進出という意味では肯定的に捉えることもできるのですが、背景として経済的余裕が無く共稼ぎ世帯が増加し、専業主婦が労働市場に駆り出されていることや、年金だけでは生活できない高齢者が少なくない中で、定年後も働かずしてはいられないという老後の経済的問題が根底にあるというネガティブな事情を反映していると考えられます。

しかし、労働政策専門機関では高齢者や女性の労働参加が今後も続いた場合でも、全体の人口減少により労働力人口は徐々に減少に転じると試算しており、将来的な労働人口の減少がいずれ避けて通れないことを警告しているのも事実です。
国内の人手不足がいずれ深刻化することは避けられないことを考えると、業務プロセスの高率化や生産性向上など、人手不足を補うための対策が不可欠であり、喫緊の課題と言えるのではないでしょうか。

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