企業を営んでいる人たちは、「回転を良くする」ことに関心をもつと言われていますが、この時の「回転」とは何を意味しているのでしょうか。
同じ規模の資本金で商売をするにあたって他の条件が一定だとすれば、あとは如何にして回転を速くするかが決定的な意味をもつと言えます。
そこで、今回はこの「資本の回転」についてまとめてみます。
先に、資本の蓄積過程でみたように、資本は可能なかぎりたえず規模を拡大しながら運動しようとします。これは生産過程のみならず、流通過程においても熾烈な競争の中でおこなわれるのです。
資本の流通過程からみると資本の運動は資本の回転過程といえます。
資本の循環と回転
資本としての貨幣の運動は、利潤を目的として商品を生産し、それを市場で販売することによって
投資した資本以上の貨幣を回収する過程で成り立つのです。つまり、一定額の貨幣は提供する商品を生産するための生産手段や労働力という生産要素に姿を変え、つぎに生産過程で生産された商品として生まれ変わり、それは市場で販売されることによって投資した時よりもより多い貨幣として資本の所有者にもどってくる過程なのです。
流通過程から見た場合、このような資本の運動を資本の循環といいます。
資本が資本として機能するかぎり、このような資本の循環は繰り返しおこなわれるのですが、たえず繰り返される過程としてみた資本の循環を資本の回転といい、一回の回転に必要な時間を資本の回転期間といいます。
資本の回転期間は、資本が商品の生産過程にある時間である生産期間と、資本が流通過程にある時間、すなわち商品生産のための諸条件を購入する時間と生産された商品を販売する時間である流通期間からなっています。
このようにみると、資本を費用としてみると生産費と流通費に分けることができるでしょう。
生産費は機械や原料などの生産手段と労働者を雇うための賃金などで構成されており、流通費は主として広告宣伝費や運送費、商品の包装や保管などの費用が含まれます。
資本の回転の意義
さて、このように資本の回転を理解すると、企業(資本)にとってどういう問題が関わってくるかということなんですが、以前に剰余価値率の問題に触れたことがありましたが、この剰余価値率が一定ならば一年間につくりだされる剰余価値(利潤)の量は一年間にその資本が何回の回転をするかによって決まるのです。
たとえば、同じ10億円の資本金(その内の可変資本は5億円)であるA企業とB企業が、それぞれ剰余価値率が同じ100%だとして、A企業は一年間に1回、B企業は2回の回転をするならば、A企業は5億円、B企業は10億円の剰余価値(利潤)を手にいれるのです。
このように、同じ大きさの資本であって剰余価値率が同じであっても、資本の回転が速いほど剰余価値=利潤の量は大きくなるのです。
以上で明らかなように、資本(企業)はできるだけ資本の回転を速めようと努めるのです。
資本の回転速度を速める方法
ではどのようにして資本の回転を速めるのでしょうか。
資本の回転を速めるということは、資本の回転期間を縮めることを意味します。すなわち、資本の回転期間を構成する生産期間と流通期間を縮めることです。
企業は生産期間を縮めるために、一方では労働者の労働時間を延ばしたり労働強度を強め、他方では生産性を高めることによって、商品の生産期間を短縮するようにつとめるのです。
また、広告宣伝費などにかなりの費用を費やしたり、運輸、通信、商業組織などを改良することによって流通期間をちぢめようとするのです。テレビを見るとコマーシャルが頻繁に出て来ますよね。
また、スーパーなどでは今やバーコードで価格をチェックするのは日常的なことになりました。
こういうのをみると、流通費にたくさんの資金が費やされているのがわかります。
このようにして、企業(資本)間の競争は結果として資本の回転をはやめることにもなると言えます。


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