高齢者の就業率増加に思うこと
先日、総務省が2015年の国勢調査を基にした人口推計を公表しましたが、それによれば65歳以上の人口は前年より22万人増えて3,640万人で、総人口に占める割合は29.1%となり、それぞれ過去最高を更新しました。
また、70歳以上の人口は2,852万人で前年より61万人増え、総人口の22.8%になりました。
要するに、総人口のうち約3人に1人が65歳以上で、4人に1人が70歳以上の高齢者が占めていることになるのです。
30%に迫る高齢化率は世界最高で2位のイタリア(23.6%)を大きく上回り、まさに超高齢化社会と言えるでしょう。
なかでも注目を引くのは高齢者の就業率ですが、なんと25.1%で初めて4人に1人が働いていることになります。
遡ってみると、高齢者の就業者数は17年連続で増え続け、906万人とこれまた過去最多を更新したのです。
これは主要7か国(G7)の中でも最も高齢者の就業率が高いことになります。
就業者全体に占める高齢者の割合も13.6%で、これまた過去最高なのです。
高齢者の就業動機として最も多かったのは、「自分の都合のいい時間に働きたいから」とのことです。
その一方で、「家計の補助などを得たい」という動機は、女性の場合は2番目に、男性の場合は3番目に多かったとされています。
高齢者の就業率が上昇しているのは「生涯現役社会」を目指す政府の政策によってもたらされたものと言っても過言ではないでしょう。
生涯現役で社会に活躍できるという面では聞こえはいいのですが、その反面において社会の高齢化が進む中、定年後の安定した生活を如何に確保するかということは、死活の問題として深刻な社会的課題の一つでもあるのです。
定年後も働かずには生きていけないという側面が、その裏返しとして横たわっているのです。
アベノミクスのもとで経済格差問題が深刻になるなかで、富裕層と貧困層の格差はひろがるばかりで、現役時代からいわゆる「ワーキングプア」とよばれる貧困層が増えているなかで、定年後も働かずして生活を維持していけない高齢者が増えていることのあらわれでもあるのです。
そう考えてみると、主要7か国の中で最も高齢者の就業率が高いことが決して喜ばしいことだけではないのであって、むしろ高齢者に対する社会保障の貧しさを露呈していることであることも否定できないのではないでしょうか。
老後の生活に不安をおぼえながら仕方なく就労するのではなく、勤労の喜びを味わいながら生涯現役で貢献できる社会にはまだ程遠いように感じてなりませんね。


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