アプロ君のいちからわかる経済教室(12)「労働力」商品
前回、たえず増殖する運動を繰り返している運動体としての資本にとって、決定的に重要な秘密が「労働力」商品にあることについてみました。そこで、今回はこの「労働力」商品にスポットをあてて理解を深めたいと思います。
「労働力」商品について理解するうえで、まず大事なことは労働力と労働を区別することです。
労働力と労働、これは一見簡単なようですが、この区別をはっきりさせることが、実は経済学では決定的な意味をもつのです。
労働力とは人間が労働をすることが出来る肉体的・精神的能力のことであって、いわば労働能力そのものをいいます。これに対して労働というのは、この労働力の発動であって労働力の消費過程なのです。
労働者が商品として売るのは、実は労働そのものではなく、労働しうる能力、すなわち労働力なのです。
一見、労働者が賃金と引き換えに売るのは労働のように見えますが、能力そのものである労働力を売るのであって、労働力の発動過程としての労働そのものをうることは出来ないのです。
要するに、労働者は企業に対し、「労働力」商品をその価値にもとづいて売るのです。
ではこの「労働力」商品の価値は何によって決まるのでしょうか。
労働力が商品である以上、他の商品と同じように労働力という商品の再生産に必要な社会的必要労働時間によって決まります。しかし、労働力は労働者の肉体にそなわっているのですから、労働力の再生産とは労働者そのものの再生産ということになります。言い換えれば、労働者の健康な身体を維持するということなのです。
というわけで、結局「労働力」商品の価値は労働力の再生産に必要な一定量の消費財の価値ということになります。そしてこの場合、労働力は生産の絶対的要素として、企業にとっては永続的に供給されなければならないので、労働者本人の生活費だけでなく後続部隊としての家族の扶養費も含まれることになるのです。
以上、労働力という商品の価値について見たのですが、では労働力の使用価値は何なのか。
実はここに資本としての価値の自己増殖の秘密が隠されているのです。
労働力の有用性は他でもなく、労働することにあります。すなわち労働能力の発動としての労働そのものに労働力の使用価値があるのです。
しかし、ここで注目すべき点は、先にみたようにこの労働こそが価値の源泉ということです。
そこで、この労働力の使用価値によって価値の増殖がおこなわれる仕組みについて立ち入って考察したいと思います。
企業は労働者から労働力という商品をその価値にもとづいて購入するのですが、仮に1日の価値が1万円として、1万円の価値が4時間の労働で生産されるとしましょう。この時、「労働力」商品の購入者である企業が労働者に8時間の労働をさせるとしたら2万円の価値が生まれることになります。そこで企業はこの2万円から1万円を「労働力」商品の価値として労働者に支払い、残りの1万円は企業の手元に残すのです。この差額の1万円がすなわち価値増殖をあらわしているのです。
こうして、「労働力」商品の使用価値はこの商品の使用価値である労働過程での価値を補償するだけでなく、それ以上の価値を生むことにあると言えるのです。
この「労働力」商品の使用価値によって生産された自己の価値以上の価値を剰余価値と言い、これが利潤として企業の手中に入るのです。要するに企業の儲けになるのです。
このようにして、労働力という商品の特殊な使用価値によって剰余価値を生む価値こそが資本なのです。


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