前回までおカネ(貨幣)についてお話してきましたが、ひとつ疑問に思えることがあるのです。
先に見てきた通り現代社会においておカネなくして経済が成り立たないのは確認できたのですが、そうだとすれば一国内においておカネはたくさんあるほど良いかという問題が出てきます。
単純に考えて、おカネがたくさんあるほどその国は豊かな国になるのではないかという疑問が浮かんでくるのです。
そこで今回は、おカネの流通量はいかにして決まるのかについて考えてみたいと思います。
貨幣の流通必要量は貨幣の流通手段としての機能との関連で見る必要があります。
というのは、例えば、1年という一定の期間においておカネはその期間に生産された商品を流通させるうえで必要な量ということになるわけです。
だとすれば、一定の期間において商品流通に必要な貨幣量は、まず流通する商品の価格総額と同じでなければならないのです。
ところが、同じ期間に貨幣が商品流通に一度だけではなく、数回にかけて使用されるとすれば、その分,より少ない量の貨幣で同じ量の商品を流通させることができるわけです。
例えば、1年間に100億円の商品が販売され、1円の貨幣単位が平均5回回転した場合、全体の商品を流通させるのに必要な貨幣の量は20憶円ですむわけです。
すなわち、流通に必要な貨幣の量は販売される商品の価格総額を額面の同じ貨幣単位の平均回転数で割ったものと言えます。
ところが、問題は現代社会では金貨の代わりに紙幣が発行され流通手段として機能していますよね。
この紙幣というのは先にみてきたように、商品流通に必要な金貨の価値を表しているにすぎないのです。もしも、紙幣が金貨の流通必要量より多く発行され流通したとしても、それはあくまで貨幣(金貨)の流通必要量を表すにすぎないのです。
かりに、紙幣が流通必要量より2倍の量が発行され流通したとすれば、紙幣1単位があらわす金貨の量は2分の1に減るのです。そのため紙幣の購買力は以前より半分に減ってしまいます。つまり、同じ商品を買うのに2倍の紙幣が必要になるということです。
このうように、流通に必要な貨幣(金貨)の量以上に紙幣が発行され流通する結果、紙幣単位が表す金の分量が減少し物価が騰貴する現象がインフレーションなのです。
このように考えると、インフレーションというのは貨幣現象と言えるでしょう。
言い換えれば、紙幣の発行量を調整することによって物価水準を変動させることが可能となるのです。あくまでも理論上のことですけどね。
ということで、かつて日本においても高度成長期に国家のテコ入れで経済成長を後押しするという口実で紙幣を大量に発行して、いわゆるインフレ政策を積極的に推し進めたのです。
その結果、物価水準はこの40~50年前に比べ格段に上昇しているのです。
このような物価水準の騰貴はインフレ政策によるものと言えるでしょう。
このように考えると、貨幣(紙幣)の流通量は多すぎても、少なすぎても経済全体に悪影響を及ぼすのです。
景気が落ち込みおカネの流通が鈍くなって、流通必要量より通貨の市場流通量が減ることにより物価が下がり続けることをデフレーションと言います。いわばインフレの真逆な現象と言えます。
日本経済がバブルの崩壊以来、長年デフレを招き、いわばデフレ不況に苦しんできたことは周知のとおりですよね。
以上みたようにおカネの流通量は、一定期間において生産された商品価格総額に見合った適度な量に調整されるべきなのです。おカネが市場に出回りすぎるとインフレを起こし、国民の生活に打撃を与えることになり、反対に流通量が足りなくなるとデフレを来して経済全体が沈滞することになるのです。
通貨の番人といわれている中央銀行の調整手腕が問われる所以がここにあるのです。


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