前回まで資本とは何か、その目的が剰余価値であること、そしてその剰余価値(利潤)がどのようにして生産されるのかということをみてきました。
ただ、剰余価値の生産を目的とする資本の運動は熾烈な競争を伴うのであって、いわば弱肉強食の原理が作用する熾烈な競争に追いやられるのです。そして、競争に負けると企業は倒産することになり、競争に勝ってこそ資本としての機能を果たし、企業は生き残れるのです。
そこで、熾烈な競争のなかでより多くの剰余価値を追求する資本の行動様式について考えてみたいと思います。
先に述べましたが、企業は一般的に弱肉強食の競争原理のもとで生き残りをかけて剰余価値を追求するのですが、そのための基本的行動様式は自己の資本規模を常に拡大しようとすることです。
わかりやすく言えば、資本規模の大きい企業ほど競争には有利であって、前にみたように同じ剰余価値率であっても、規模が大きいほど剰余価値量は多く得られるのです。
というわけで、企業は剰余価値率を高めようとする一方で、たえず企業規模を拡大しようとするのです。
では、いったいどのようにして規模を拡大しようとするのでしょうか。
資本の不断な運動として見た場合、資本規模の拡大は、すでに獲得した剰余価値(利潤)の一部を資本に追加することによって行われるのです。すなわち、儲けた利益の一部を資本として機能させるのです。
例えば、初年度の投資額が5億円として、初年度の利益が10億円だとしましょう。この場合、利益の50%を資本の拡大に回すとすると、5億円を資本に追加することになるのです。このようにして、2年度には資本規模が初年度の2倍の規模に増大することになるのです。
このように既存の剰余価値(利潤)の一部を資本に転化させることを資本の蓄積と言います。
資本間の熾烈な競争のなかで剰余価値の追求を目的とする資本として存続させるためには、このようにして資本規模を絶えず拡大しようとするのです。そういう意味では、資本の運動はすなわち資本の蓄積過程なのです。
先にみたように、資本は自己増殖する価値と定義しましたが、その資本の運動がたえず剰余価値を生む過程、すなわち資本の蓄積過程であるという意味では、不断な資本の再生産過程なのです。
資本の蓄積は自分自身で手にいれた剰余価値をふたたび自らの資本に追加していく方法(資本の集積)と、他の企業を吸収・合併するなどの方法(資本の集中)があります。
私たちは日々、企業同士の合併や、倒産しかけた企業を大手の大企業が吸収することをよくみかけるのですが、これは企業が資本としての存続をかけて過酷な競争をしている現代社会の日常でもあり、まさしくこのことが際限なく行われている資本蓄積過程に他なりません。
資本の集中は資本の社会的配分を変えるだけで、その総量を変えるのではないのですが、資本の集積は社会全体の資本の増大をもたらします。
今日、日本の経済規模が世界有数の規模にまで成長・拡大してきたのは、他でもなく各企業による不断な資本の蓄積がもたらした結果といえるでしょう。
以上、見てきたように資本の蓄積は資本規模の拡大を意味しているのですが、実は量的拡大のみならず資本の蓄積は資本の構造そのものも変えていくのです。
この点については、次回にまとめてみることにします。



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