アプロ君のいちからわかる経済教室(15)剰余価値率と利潤率

前回、剰余価値の生産メカニズムについて労働過程の視点から考察しましたが、資本の価値増殖において労働力商品にその秘密が横たわっていることができたと思います。

さて、この資本の価値増殖を資本の投資という観点からみると、二つの側面から捉えることが出来るでしょう。

企業の活動を見るとわかるように、一定の資本金で購入するモノは大きく人を雇うことと、設備を整えるための支出と言えます。要するに、労働者を雇うための資金と設備や機械などを揃えるための資金とに区別することが出来ます。
この時、労働者を雇うのに支払われる資本を可変資本と言い、機械や設備などの生産手段に支出される資本部分を不変資本と言います。

このような理解は価値増殖の源はあくまでも労働にあり、労働の源泉である労働力にあるという理解に基づいています。言い換えれば、資本としての価値増殖は労働力商品にその秘密があって、機械や設備などの生産手段は価値増殖の補足的な役割に過ぎないということです。
そういう意味で、資本の価値を増やす直接な源泉である労働力商品に費やす資本を可変資本と呼び、生産手段に費やされる資本はその価値を増やすのではなく、生産される商品に価値を移転させるに過ぎないということで不変資本と呼ぶのです。

このように資本の価値増殖のために投資される資本は可変資本と不変資本で構成されているのです。そして、このように区別することによって投資された資本のうちのどの部分から剰余価値が生まれたのかがはっきりするのです。

そこで、投資した資本に対してどれだけ剰余価値が生まれたのかを見る場合、投資した全体資本との関係ではなく、全体資本のうちの可変資本との関りでみることになるのです。
この時、可変資本の投資額に対する剰余価値の割合を剰余価値率と言います。

外観上、企業は投資した総資本に対して儲けがどれだけ得られたのかということに関心を持つのですが、その内実は投資した可変資本に対する剰余価値の多いさ、すなわち剰余価値率の大きさを意味しているのです。

可変資本は労働者に支払われる賃金を表しているので、剰余価値率は労働者一人当たりにどれだけの剰余価値が生み出されるのかを示す値でもありますので、剰余価値率は資本による労働力の「搾取率」を表していると言えるでしょう。
労働者の1日の労働時間のうちで必要労働時間より剰余労働時間の割合が大きいほど、労働に対する「搾取率」が高いことを意味しているのです。

資本主義の仕組みが変わらない限り、現代社会においても資本としての企業の活動は、その本質において剰余価値率をいかにして高めるかが基本目的となるのです。

とは言え、この剰余価値率は直接、表面には現れないのです。
企業は表面的には投下資本の中身を問わず、企業が投資する投資資本全体に対する利益として考えるのです。すなわち、可変資本と剰余価値の関係としてではなく、投資する総資本に対する剰余価値の割合として意識するのです。
この時の投資した総資本と剰余価値の割合を利潤率と言います。

こうして、外観上は企業にとっていかに利潤率を高めるのかということへの関心として現れるのです。

剰余価値率の利潤率への転化によって、労働に対する「搾取率」は影を潜め、資本の生産性として顕在化するのです。
現代社会の生産関係における謎めいた現象が、この側面においてもうかがえるのではないでしょうか。

 

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