前回まで資本としての貨幣の役割をみてきました、要するに価値増殖する価値、すなわち剰余価値を生む価値であることが明らかになったと思います。そこで、今回は剰余価値の生産メカニズムにスポットをあてて考察してみましょう。
剰余価値の生産を労働過程から考察すると次のように見ることが出来ます。
労働者が労働する一日の労働時間を労働日と言いますが、この労働日は価値の生産過程としては二つの役割に分けることが出来ます。
まずは労働者自身の労働力の価値に該当する価値の生産部分と、企業の利益に該当する価値の生産部分とに分けることができます。前者の生産に費やされる労働時間を必要労働時間と言い、後者、つまり企業手元に残る利益の部分を生産する労働時間を剰余労働時間と言います。
要するに、労働者の労働時間は必要労働時間と剰余労働時間とで構成されているということです。
そして、必要労働時間において労働者が提供する労働力の価値を生産し、剰余労働時間において企業のための剰余価値をせいさんするのです。
例えば、労働力の価値が4時間として、労働者が1日に8時間労働をすると仮定すると、最初の4時間は労働力の価値を生み、残りの4時間において資本(企業)のための剰余価値を生み出しているのです。そして、必要労働時間において生産された労働力の価値は労働者の賃金として支払われ、剰余労働時間において生産された剰余価値は企業の儲け分(利潤)として企業の手元に残るのです。
要するに、労働者の労働によって創造された価値は、労働力価値と剰余価値とに分けることが出来、労働力の価値部分はは労働者の労働に対する分け前として労働者に支払われ、剰余価値は企業の儲け分として手元に残るのです。
ここで確認しておくべき大事な点は、企業に雇われて仕事をすることは商品交換の法則に基づいて行われているということです。
企業は労働者を4時間の労働、すなわち労働力の価値に等しい賃金を払い、契約通りに8時間の労働をさせることによって儲けを生み出しているのです。
要するに、資本と労働者の商品交換、すなわち企業側が提供する賃金貨幣と労働者が提供する労働力の交換は商品交換の法則である価値法則を少しも侵害していないのです。
ここに現代社会における謎めいた交換関係が存在するのです。謎めいているというのは、中身においては不等価交換であるにもかかわらず、形式上は等価交換として現象するからです。
労働者は4時間の生産物を分け前として受け取り、その代わりに8時間の労働を強いられているのです。現実的には8時間の労働と4時間の労働の交換が行われているということです。
それが等価交換法則としての価値法則のもとで公然と行われているのです。
というわけで、資本(企業)は商品交換の法則、価値法則の貫徹のもとで企業の儲けである剰余価値を生み出しているのです。


にほんブログ村
コメント