アプロ君のいちからわかる経済教室(13)賃金とは何か

前回、資本としての運動を担保する決定的なものが「労働力」商品であり、労働力の特殊な使用価値にあることを考察しました。そこで今回は、この「労働力」商品の価値にスポットをあてて考察してみたいと思います。

前回の説明のなかで労働者が企業と交換するのは、労働そのものではなく労働力をその価値に基づいて交換すると言いましだが、この時に労働者が「労働力」商品の価値として受け取るのが他でもなく賃金なのです。
要するに、企業が労働者を雇って労働者に支払う賃金は「労働力」商品の価値をあらわしているのです。

ところが、この賃金は一見、労働者の労働に対する報酬のように見えますよね。
例えば、労働者が企業(会社)から受けとる1ヶ月の賃金は、1ヶ月間の労働に対して支払われる報酬のようにあらわれるのです。
パートタイマーの労働などは時給で受け取る場合は、それこそ労働時間た給料が支払われるので、まさに労働に対する報酬として賃金が支払われているように見えます。

しかし、すでにみたように「労働の価値」として賃金が支払われるなら、企業が受け取る儲けの分、すなわち剰余価値(利潤)が生まれる余地がなくなってしまいますよね。
どういうことかと言いますと、例えば労働者が8時間労働して作り上げた価値をその全部が賃金として労働者に支払われるなら、企業に残る部分がまったく無くなってしまうのです。
すなわち、企業の儲けの部分である剰余価値が発生する余地がなくなるということです。これは常識的にあり得ないことです。企業が労働者を雇い生産活動をするのは一定の儲け、すなわち利潤(剰余価値)が目的なのです。

こうして、労働者が企業に売るのは、労働ではなく労働力を商品として売るのであって、この「労働力」商品の価値が賃金なのです。
言い換えれば、賃金とは労働力という商品の価値・価格であって労働の価格でもなく、労働に対する報酬でもないのです。

資本主義社会に生活している私たちがよく経験することでありますが、表面に現れている現象と、その内実が乖離することはよくあることであって、賃金はまさしく内実が違った形で現象している、言わば本質と現象の乖離が典型的にあらわれている資本主義経済システムの象徴的な範疇なのです。

 

にほんブログ村 経済ブログ 経済学へ
にほんブログ村

Follow me!