先日報道された二つの最高裁判決が物議をかもしているようです。
ボーナスが争点となった大阪医科薬科大訴訟と、退職金が争点となった東京メトロ子会社「メトロコマーズ」の訴訟に対する最高裁の判決です。
最高裁では、非正社員に退職金やボーナスを支給しないのは非合理とは言えないという判決をくだしました。
これは「経営判断の自由」を訴える経営側の主張に沿う内容で、事実上経営側の裁量に理解を示したものと言えます。
ところが、その一方で日本郵便の契約社員らに対する待遇格差をめぐる裁判では、格差是正を命じる判決がくだされました。
格差を違法とする司法判断がくだされた形になったわけです。
格差問題を象徴するこの一連の判決に世間が関心をよせているのです。
昨今、日本でも格差問題が取りざたされて久しいのですが、これは日本の雇用構造の変化が背後にあるように思います。
今や日本の雇用構造は大きく変わり、派遣社員やパート・アルバイトなどの非正社員は働き手の4割近くを占めるようになっています。
勿論、これは1990年代以降、「派遣法の改正」など国の雇用政策による結果によるものなのですが、失業率が低下しているのも、実は所得水準の低い非正規雇用の増加によるものなのです。
国税庁の民間給与実態統計調査(2019年)によると、非正社員の平均年収は175万円で、これは正社員の平均503万円の約35%にとどまるのです。その要因の一つが、ボーナスや退職金の支給如何にかかわる問題にあるようです。
要するに、ボーナスや諸手当、退職金の支給があるかないかによって、賃金格差が大きくわかれるのです。
ところが、非正社員の場合はボーナスや各種手当などが支給されない場合がほとんどで、退職金にいたっては皆無に等しいと言われています。
こうして、いわゆる「ワーキングプア」と呼ばれている年収200万以下の非正社員の急増が、すなわち格差問題の根源に横たわっていると考えられます。
そういう意味では、非正社員の待遇改善に向けた施策が格差問題を解消していくうえで、不可欠の問題と言えるでしょう。
非正社員の待遇に関わる司法判断が、これからも様々な形で表面化されていくと思いますが、今後も注視すべき問題ではないでしょうか。


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